M-044 スリープ
スリープ
さいみんじゅつ
「眠いと思ったのに,お風呂に入ったらそんなこともなくなるのは何故だろう」
魔法使いが眠い目を擦りながら四人に問いかけた。
「眠いなら寝なよ」
「そんなに目をこするとあとで腫れるよ」
「いや、答えてやれよ」
「めんどくせー」
問いかけが無意味になることなど、よくあることだ。特にこの魔法使いが発言者だった場合は。
今回も、問いかけ自体にはさほど意味はなかったらしく、彼女らしい直球で本題に取りかかった。
「よく眠れる魔法作った」
な、ナンダッテー。
仲良く四人でハモった。いいリアクションに魔法使いさんは大満足。
ドヤ顔で魔法の説明を始めた。
「スリープ!」
魔法のスペルを唱えると、相変わらずバランスの悪そうな術式とともに一冊の本が現れた。
重たい……辞書ほどの厚みはあろうか……本を片手でキャッチ、できるはずもない。魔法使いの腕力は低いからだ。
本はひしゃげて床に落ちた。
「……」
何事もなかったかのように本を拾い上げる魔法使い。その様子を四人は黙って見守っていた。
「本を開きます」
「ほーん」
「それはねーわ」
「殴ってもいい? 舟長」
「まあ待て魔法使いさんの話を聞こう」
「読みます。するとたちまち、ね・むく……」
ガタン。
魔法使いが倒れかけ、斧戦士が椅子を蹴っ飛ばした。
魔法使いはむにゃむにゃ言いながら眠っていた。
魔「難しい本を読むと眠くなりますか?」
舟「ちょい、聞くな」
魔「まー、どっちかって言うと、わたしは目が滑る派」
ア「ボクは頭痛くなってくる派」
斧「おれはぶん投げる派」
魔「本は大事に!」




