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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
日記編(Dシリーズ)
454/527

D-06 メテオストール2 / M-253


メテオストール2

宣伝効果はいかに




 魔法使いの作ったメテオ色のストールとマントを羽織り、斧戦士は街を歩く。

 好奇と忌避の視線がちらつくが、当然この青年は気にしない。

 むしろ、大好物だ。

 ウキウキ、街を歩く。


「そこの君。あー、怪しい色合いのマント着てる君!」


 誰かに呼び止められた気がする。

 だが、斧戦士は歩みを止めない。

 最愛の魔法使いが作ってくれたものなのに。

 他の誰が何と言おうが、これは怪しい色合いのマントではない。

 強いていうなら、メテオカラーだ。

 それ以外の何ものでもない。

 斧戦士、サクサク、街を歩く。


「少し話を伺いたいのだが、いいかな」


 前方からも人が現れた。

 たぶん、後ろから迫っているやつと同じ制服。

 自警団か。

 街で追いかけっこしようか? と真剣に考えた。

 だが、それは魔法使いの評判を落とすだけで、決して上げはしない。

 さまざまなことを考慮して、斧戦士は歩みを止めた。

 なるべく不機嫌そうに見えるように。


「なにか?」

「うっ……」

「君の所属を聞きたい」


 後ろのやつはともかく、前から来たやつは肝が据わっているらしい。

 それとも、職務に忠実なのか。

 斧戦士の視線をものともせず聞いて来たので、感心した。

 素直にパーティー名を答えてやる。


「冒険者。スカイアドベンチャーにいる斧戦士だ」

「クロマテック団という組織に聞き覚えは?」

「……それは確か、おれがぶっ潰した組織じゃないか?」

「なんだって! ど、どうしてそんなことを……?」

「おれが彼女からもらったこの装備と同じ色合いの服で悪さしてたから」


 押し黙る二人。

 いつの間にか、後ろから迫っていた人物も、斧戦士の前にいた。

 ついでに果敢に質問してきたので、感心して答えた。

 しばらく間が空いて。

 やや臆病そうな男が、おずおずと言った。


「じゃ、じゃあさ、君がスカイアドベンチャーだって分かるよう、そのマントやストールにデザインをつけてくれないかな」

「デザイン?」

「そうだ。今のままでは、クロマテック団の生き残りに見えてしまう」

「彼らは倒され弱体化したとはいえ悪の組織。街を堂々と歩かれると困るんだよ」

「……要は、おれがクロマテック団の一員ではないと分かればいいんだな」

「話が早くて助かるよ」


 斧戦士はマントを脱ぐと、左手を空に掲げた。

 斧戦士は、実は左手が利き手なのだ。

 斧を持つのは右手だけど。

 それはともかく、斧戦士は光る左手を下げ、マントに触れた。

 すると、なんということか。

 マントに、杖と三角帽子のロゴと、魔導研究所の文字が映し出されたではないか。

 黒っぽいマントに白字の文字は目立つ。

 二人はこそこそと話す。

 耳のいい斧戦士には丸聞こえだ。


『魔導研究所って何?』

『分からん……が、冒険者だからそういう組織があるのかも』

『知らないからかもしれないけど、より一層怪しさが増してね?』

『そんなことは言うな! 俺も思ったけど……』

『どうしよう、やり切った感満載なんだけど、あの人』


 最善を尽くした斧戦士は満足げ。

 これで魔法使いの元へいろいろな依頼が来るに違いない。

 ふんす、と胸を張り、二人に向き直った。


「この布は隕石で染めてあるんだ」

「は? 隕石?」

「隕石を溶かして染めた糸で織ってある。こっちのストールも同じ。攻撃力があがるよ」

「冒険者用の装備……なんですか?」

「そんなことができるのは魔導研究所だけ。お二人さんも是非来てね」


 そう言い残して、斧戦士は歩き出してしまう。

 戸惑う二人がはっと気が付いたときには、赤黒いマントの男は遠く。

 二人は顔を見合わせて……。


「とりあえず、魔導研究所という組織を調べようか」

「ああ、スカイアドベンチャーに事情聴取だ」


 マントの男を追いかけた。






舟「うちはクリーンな冒険者だって言ってんだろーが!」

ア「舟長、そのうち高血圧で死にそう」

剣「いや、止めてやれよ」

斧「魔法使いさん、このロゴ、今度から魔導研究所で使ってね」

魔「わあ、おしゃれでかっこいい! ありがと、斧戦士さん」

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