M-042 マッドシャワー
マッドシャワー
飛び出す泥
「どうしよう、これ」
頭を傾げて悩んでいるのは魔法使い。SKという名の冒険者に所属しているアタッカーだ。
今は大きく開いた穴の前で項垂れている。
「またびしょびしょになった……アサシンちゃんに怒られる……」
項垂れているのは、セリフ通りのさまである。
巨大なストローでボーリングしたら水が吹き出た。それだけのことなのだが、魔法使いは迷っていたのだ。
「とりあえず、埋めとくか。誰が間違って落ちたら危ないし」
地属性の魔法を撃って、雑に穴を埋めていく。
しかし、地属性はあとで消えてしまうのが多い。だから、そうでないものを選ぶのだが、どれもこれも小出しにするものばかり。
なかなか埋まらなくてイライラしてきた魔法使いは、考えを変えた。
「コンクリ流し込んだる!」
コンクリは生み出せないので、代わりに泥を流して埋めることにしたのだ。
いま、そのための術式を、魔法陣を魔法使いは作り上げている。
「効果はSPが切れるまで永続。出すものは泥だから、地属性と水属性か」
そうこうしてできたのが、マッドシャワーだ。
これは、おとぎ話のマジックアイテムと同じく、止めたいという意識がなければ生まれ続ける。
お粥よとまれ、だ。
「マッドシャワー!」
穴に向けて両手を向け、いざ射出。姿だけを見れば、ビームを撃つかのような体勢だが、両手から出ているのは泥。なんとも地味な構図だ。
「うぉおお、SP全然減らねー!」
魔「あのあと金属製の蓋をしておきました」
ア「何の話?」
魔「あっなんでもないです、わたしがびしょ濡れだったのとは何の関係もないです」
ア「……とりあえずお風呂入ってくれば?」
斧「魔法使いさんのお風呂シーンはありません」




