F-46 ネームステータス
ネームステータス
称号システム
ヘレンとフレンドになったことで称号を手に入れたエルナ。
早速、ケビンたちから教わって称号を装備する。
「よし、これでいいはずだ」
「あ、成功よ! 見て、頭の上!」
リリアの指さす方向を見ても、なにもない。
エルナが不思議がっていると、ヒルダが教えてくれた。
「エルナさんの頭にくっついてるので、自分じゃ見えないんですよ」
「頭が動けば称号も動くの。まあ、何の称号を付けているかなんて、分かってるからいいんだけど」
「そうだ、アリサ。あなた、試しに称号を付けてみたら?」
「そうです! そのほうがエルナさんに分かりやすいかも……」
アリサは照れたように視線を逸らす。
どうしたのだろう?
「あのね、私、一個しか称号持ってなくて」
「いいじゃない。それを使えば」
「え、えーとね。じゃ、じゃあ、ケビンの家でならいいわ」
「な、俺の家?」
「とにかく、周囲から隔離された空間ならどこでもいいの! ね!」
アリサの力強いゴリ押しによって、一行はケビンの家へ。
一人暮らしのケビン宅は、まあ、男の住居であった。
お世辞にもきれいとは言えない部屋で、アリサは決意を固める。
「行くわ」
「ドキドキ……」
「私たちが一つしか持たない称号……? あっ」
ヒルダが首を傾げていたが、ついにそれは分かる。
アリサの頭の上で燦然と輝く称号は。
「【稀代の発明家】?」
「きゃあ、読み上げないで! 恥ずかしいんだから!」
「アリサ……あなたねえ。エルナ、これはジョブ称号と呼ばれるものよ」
「初めてそのジョブでバトルに勝利したとき、もらえるんです」
ヒルダが私も持ってます、と称号を見せてくれた。
【虹の魔導士】と書かれている。
虹、というのは各属性を自在に操ることが由来なのだとか。
「いつも自信満々のくせに、どうしてこういうときはダメなのよ?」
「もっと、発明家ってジョブをアピールしたい、って言ってませんでしたっけ」
「そうだけど! これじゃまるで、私が高慢ちきな女みたいじゃない!」
「アリサのこだわりはよく分からないな」
「とにかく、これを付けて街中歩き回るなんて、絶対嫌なのよ!」
わあわあと騒ぎ立てるアリサ。
エルナはふと思う。
そんなに騒ぐといっそ人を集めてしまうのではないか、と。
エルナの予想通り、ケビンの部屋のドアが叩かれた。
「はいはーい」
「おい、ケビン! ずいぶん賑やかなこったな。女を連れ込んでウハウハか?」
「あ、いや、すまん。ただのパーティメンバーだよ」
「ん? あそこにいる女は……【稀代の発明家】? 大層な名前だな!」
「ジョブ称号なんていつもそうじゃないか。静かにするよう言うから、とりあえず帰ってくれ」
赤ら顔の男は、ケビンとともに外へ。
部屋の中は静まり返っていた。
自らの禁忌を破られたアリサが固まっていたからだ。
「アリサ……。け、ケビンが言った通りよ。ジョブ称号はいつも大げさだから、ね?」
「発明家はレアジョブですから。より壮大になってしまうんです」
「そ、そうなんだ……お気の毒に」
アリサがわなわなと震える。
石化した像が崩れたかのように、アリサはしゃがみこむ。
「わ、私、明日からこの街を歩けないわ……!」
「……え?」
「冒険者もやめるー!」
わあわあ泣き出すアリサ。
とりあえず、元凶の称号を取り外したほうがいい気がするよ。
アリサに天の声が届くはずもなく、男の声がケビンの部屋に近づく。
「おい、泣いてるぞ! さてはケビン、やらかしたな?」
「違うって。これは事情があってさ……。アリサ、早く立ち直ってくれ……!」
魔「おじさんは悪い人ではないが、間が悪かった」
斧「かわいそー」
ア「絶対思ってないでしょ」
剣「オレたちも何か称号付けようぜ!」
舟「やめろ。舟の名前でさえ苦戦したんだぞ」




