F-45 ワンハンドレットフレンド2
ワンハンドレットフレンド2
ともだち百人できるかな
「という訳でして」
「ははあ、この森にはやたらな人物が立ち寄らないようバリアが張ってあったのか」
「いつも皆さんが来るときは、解除しておくのですが、突然のことだったので」
「それは別にいいわ。押しかけたのは私たちの独断だもの」
「けど、どうして……急に連絡をしなくなったんですか?」
「それは……」
花粉が落ち着き、今ヘレンと五人はテーブルを囲んでいる。
お茶の時間だ。
お菓子はミートパイ。
用意したのはスカイアドベンチャーだ。
「その、備蓄がなくなってしまったの」
「何の?」
「食料の。食べ物の備品が切れてしまって、けれど外には出られなくて」
「それで、こんなところで倒れていたっていうの!?」
「まさか、ご飯食べてないんじゃ――」
「大丈夫、抜いたのは今日の一回分だけだから」
儚げに笑うヘレン。
そういう問題ではない。
仮に食べていないのが一食分だけだとしても、その前の食事で量を減らしていた可能性がある。
以前見たときよりも、ほっそりしたヘレンの姿に、ケビンが立ち上がる。
「俺の分も食べ――」
「あ、いいです。急にたくさん食べられませんから」
玉砕。
笑顔で斬って捨てられたケビン氏は、中途半端に片手を上げたまま、固まっている。
リリアとアリサが呆れて笑う。
「こういうの、久しぶり。楽しいですね」
「それよ! いつでも戻って来ていいのよ、ヘレン」
「そうよ、ていうかあなたが来ないと冒険が始まらないんだから」
「私、以前より強くなりました。ヘレンさんの負担、減ってると思います」
「みんな……」
感動のシーン。
肩身が狭いエルナである。
しかし、エルナはあと一か月程度でこの世界からいなくなる。
ヒーラーのヘレンが不在では、ケビンのパーティはやっていけないだろう。
「私もそれがいいと思います。強制はしないですが……」
「あの、あなたは?」
「私はエルナと申します。ソロの冒険者で、今はリリアさんたちとパーティを組んでいます」
リーダーのケビン、代表者からあぶれるの巻。
ヘレンの拒絶から立ち直りつつあった彼は、再びテーブル下に沈む。
どうやら頭を抱えているようだ。
可哀想に。
「ソロの……。では、もしかしてお強いヒーラーのかたですか」
「まだまだですよ。それで、私、一か月後に隣の大陸に渡ろうって考えているんです」
「え!?」
「何ですって!?」
「初耳よ!」
「そんな……」
四人の驚きをよそに、エルナは続ける。
「ここでの冒険者活動で自信がついたので、ちょっと新天地でやってみようって」
「そうなんですか……隣の大陸に、どなたか知り合いがいらっしゃる?」
「はい。友だちに誘われて、それがきっかけです」
「エルナさん、と言いましたか。一か月の間でいいので、お友達になってくれませんか?」
「もちろんです。喜んで」
ヘレンの瞳に炎が宿る。
エルナ去りしあとは、ヘレンこそがパーティに必要な人材となるのだ。
そして、この場所にはスキルアップに打ってつけの相手がいる。
このチャンス、見逃す訳にはいかなかった。
生きる気力が湧いてきたヘレンは、素早くパイを片付ける。
「では、まず……フレンド登録をしますので、承認お願いします」
魔「友だちってそういう!?」
ア「ソシャゲ仕様」
斧「友だちになると、自由にメッセージを送れるらしい」
舟「ところで、エルナが何かゲットしたみたいだぞ」
剣「【初めての友だち!】だってよ。なんだ? これ」




