F-29 キャピタルイベント4
キャピタルイベント4
山があるなら、飛べばいいじゃない
夕食が終わって、腹ごしらえを済ませた五人+エルナ。
寝る前にと言って、舟長が取り出したのは地図。
エルナにはその地図を見た覚えがあった。
そう、忘れもしない数時間前。
ケビンの手紙を見ながら、視界上に表示してもらっていた地図だった。
「あのとき話した通り、ココの村はここ、こっちがセミナの街、レイナンの街はこっちだ」
「で、ここが王都エンペラスなんだね」
「いまはどこを飛んでるんですか?」
「斧戦士さん、モニター見せて」
「ほい」
斧戦士が壁のパネルを操作する。
すると、白い大理石の壁から光が浮き出て、ホログラムが投射される。
ファンタジー世界にはそぐわないSF感だったが、そこは誰も気にしない。
ホログラムの中心に大きく映る青い舟は、まさしくこの飛行船だ。
そして、時間を大きく無視して、船は青い空と雲の間に浮かんでいた。
「ヒント:イメージ映像」
「ほほほほら、ゲームじゃ時間の概念は表現されないから」
「そういうゲームもあるだろ!」
「どんなツッコミだ」
「はいはい。じゃあ地図とディスプレイを連動させるよ」
アサシンがそう言うと、ホログラムから光が飛び出して、地図と接触する。
光が消えると、地図の上に舟のホログラムが表示されていた。
舟は地図の上を、ぎりぎり見えるスピードで北へ向かっている。
「もうレイナンの街を過ぎたんですか?」
「そうだぜ。まあ、この調子なら約束の時間には間に合うと思う」
「舟長、思う、じゃないんだ。必ず、間に合わせるんだ」
「魔法使い……。今度は誰の真似だ?」
「オリジナルという言葉を知らんのかね」
険しい顔を向ける魔法使いだったが、舟長は涼しい顔だ。
シリアスなんてない。
シリアスになんて、させない。
そんなことは他の人に任せておけばいいのだ。
舟長はそんなことを思っている。
「エルナちゃん。ここのひときわ濃い線がなんだか分かる?」
「ええっと、山、ですか?」
「そう。王都に行くにはこの山脈を超えなくちゃいけない」
「しかもここは、車……いわゆる馬車だね。それが入れない場所なんだよ」
「えーと???」
エルナは目を白黒させている。
少し難しかったかな、アサシンと剣士は目を合わせて笑う。
「簡単に言うと、ここの山脈が一番時間がかかるから、空を飛んでるんだよ」
「オレたちなら比較的容易く登れるだろうから、ワープの杖を使っても良かったんだが」
「隣の大陸でも入手が難しいこの杖を、何故持っているのかなんて詰問されたくないだろう?」
「きつもん……?」
聞きなれない言葉に首を傾げる。
すると、思いもよらぬ人から返答があった。
舟長とケンカ……語り合っていた魔法使いだ。
「厳しく問い詰められることだよ」
「あ、舟長さんとのお話は終わったんだ」
「……今日のところはわたしの負けにしました」
「え?」
斧「舟長、覚悟ー!」
舟「回避力がもの言うぜ」
ア「ちょっと! エルナちゃんがいる前で、R-18Gとか勘弁してよね!」
魔「ポップフィルター!」
E「わあ、急に視界がファンシーに……!」
剣「あ、舟長やられた」




