M-040 ウォーターボール
ウォーターボール
水中呼吸の術
海です。
SKは今、海に来ています。クラーケンを狩りに。
娯楽のためではありません、しかし全員が水着です。
それには深い理由がありまして……。
「錆びてる」
「塩水だから仕方ないよ」
「……これの修理にいくつ素材が必要だと思ってんだ」
「知らないけど、うーん、全部で五個くらい?」
「一人につき一個か」
「甘いな。一パーツにつき一個だ」
「……すると、オリハルコンが最低六個必要ってこと?」
「その他にスターダイアモンドが三個、ミスリルが六個、聖なる羽根が二個、ダイアモンド一個、隕石が一つ……」
「めんどくさ」
「というわけで、次の狩りの時は、全員装備なしで」
「えぇー!?」
舟長のアイテム守銭奴が発動したせいで、みんな装備を取っ払って、クラーケンと戦っているのです。
「当たったら死ぬぞ!」
「わたしの装備がぁー生命維持装備がぁー」
「というか、魔法使いさんとおれは素手でもかなりダメージ出るけど、舟長とかどうよ?」
「ぼ、ボクには即死があるから……」
「オレは武器持ってても大したダメージ叩き出せないし」
「……ダメージなんか入んねーに決まってるだろ!」
逆ギレにも程があります。
アクセサリー類は着けているので、アサシンの即死には相変わらず期待できますね。
なに、即死技がないって? しまった、短剣か爪を装備しないと使えないんだった!
「ボク、一生の不覚!」
「珍しいな、アサシンが要らない子枠になるなんて」
「い、要らない子じゃないし! 挑発してかわすぐらいできるし!」
「あっ、クラーケンが潜ったぞ!」
「これじゃ攻撃が通らないぜ!」
「それはどうかな、ウォーターボール!」
魔法使いさんが高々と叫ぶ。ノリノリです。
「それはどうかな」って一度は言ってみたいセリフだよね。言う機会ないけど。
魔法使いを中心に、球体の水の膜が出来上がる。そのまま海にダイブ。酸素をある程度確保したまま海中戦に出陣じゃ!
「舟長、この杖持ってて」
「おう……めっちゃSP吸われるんだが」
「SPが終わると溺れちゃうから、わたしが魔法撃つまで耐えて!」
「結構危ないな! この魔法!」
「四人もいるから楽勝でしょ!?」
「SPバンクとしてしか見てねーな、コイツ!?」
罵っている暇もなく、魔法使いは途中から四人を無視して術を組み始める。
使う属性は、お馴染みの無属性ではなく、地属性。システムが何の因果か決めた、水属性の弱点だ!
「ストーンスピア!」
海底から鋭い岩が競り上がり、クラーケンを下からどつく。柔らかそうなところにヒット! 大ダメージを与えた。
「与えた……って倒せてねーのかよ!?」
「トランスなし装備なしだぞ!? どんだけ弱体化してると思ってるの!」
「ぐっ、だがこっちのSPが持たんぞ」
「仕方ない、みんなで溺れよう」
「どんな考えだよ! いったん上昇して……」
「あっ、クラーケン逃げた」
「はっ?」
SKはシステムに縛られているが故に、戦い続けようとしたが、SKと相対するモンスターの方はシステムに縛られているとは限らないのだ。
すなわち、体力が減ってピンチになったらモンスター側だって、逃げることができるのだ。なにより自然の摂理に叶っている。
「……」
「どうするの? 魔法使いちゃん以外SPからっぽだよ」
「とりあえず浮こう」
「ガボボボ」
水中で会話してる場合か!
「ちぃ、一旦撤退だ!」
魔「燃費悪いのがネック」
舟「くっ、この舟長、一生の不覚だぜ。敵を目の前にして逃がすとは」
魔「なに言ってんのこの人」
斧「リアルな異世界で弱ったモンスターが逃げ出さない訳がないよな」
ア「一撃必殺が流行る訳だよ」




