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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
隣の大陸編(Fシリーズ)
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F-24 グランドレイド6


グランドレイド6

人に勧めるときは気を付けましょう




『結局、半分も回れなかったねー』

「周回って大変……」


 エルナは夕焼け色の雲を眺めながら、ベンチに座る。

 日中に比べ、人の少なくなった広場は、かなり寂しい雰囲気を醸し出している。


「サロメさんはどこかなあ」

『斧戦士さん、レーダーよろしく』

『あいあいさー。ぴこっ、サロメ・インカラーを発見。近くの路地裏で知り合いに捕まっている様子』

『はえーよ』

『ホ』

『やめんか』


 遊んでいるように見えるが、遠い大陸で彼らは仕事をしていた。

 調べているのは、レイナンの街の宿泊状況だ。

 案の定、どこにも空きはない。

 サロメが来なければ、エルナは野宿コース一直線だ。

 しかし、こんな病弱そうな彼女を、そのまま寝かす訳にはいかない。

 テント、ねぶくろ、温かいスープ。

 サロメ不在時の準備は万端だった。


「エルナー!」

「あ、サロメさんだ」

『サロメさんだけど、なんか知らない人も一緒にいるね』

「遅くなってごめんなさい。紹介するわ、彼は、レイナンの副市長、ハワードよ」


 偉い人を紹介されたエルナは困惑した。

 どう接すればいいのか、分からなかったのだ。


「といっても、彼は数年前まで冒険者をやっていたの。そんなに恐縮する必要はないわ」

「サロメから話を聞いて、どうしても会いたくなってしまって。君がエルナさんだね」

「あ……はい。えと、エルナです。よろしくお願いします」

「はいはい、堅苦しいあいさつはここで終わり! エルナ、ご飯、食べに行きましょ」


 サロメの手に引かれ、エルナは食堂へ案内された。

 場所は路地裏だったが、内装は小綺麗で、清潔な香りがした。

 キョロキョロするエルナを、ハワードがそっとリードする。


「今日はハワードのおごりでいいかしら」

「言われると思った。ここは高くないから別にかまわないけれど」

「まあ、嬉しい。さすが副市長ね。さ、エルナ、好きなものを頼んでいいわ」

「えーと」

『おごってくれるとは太っ腹な。しかし、どの名前がどんな料理だか分かりゃしねえ』

『無難な選択肢は、おすすめを聞くことかな。サロメさんに聞いてみたらどう?』


 スープをすする音が聞こえる。

 食堂には、エルナたち三人しかいない。

 つまり、スカイアドベンチャーがご飯を食べながら、エルナのことを見ているのだろう。


「二人のおすすめはなんですか?」

「トントン定食ね!」

「ラリッタ丼とかどうかな」


 それぞれ違う反応が返ってきた。

 エルナがどっちにしようかな、と思案を巡らせようとしたそのとき。

 二人が険悪なムードに包まれる。


「ハワード! あんた、なにゲテモノ食わせようとしてるのよ!」

「いや、この食堂に来た冒険者は、まずこれを食べるのが決まりだろう?」

「男連中はそれでもいいけど、エルナはか弱い女の子なのよ!」

「彼女も冒険者なんだからそれなりの覚悟はしているだろう。つまり、大丈夫さ」

「あれの原材料、なんなのか知ってんでしょ! 宴会の罰ゲームじゃあるまいし、わざわざ食べるようなものじゃないわよ!」


 やんや、やんやとヒートアップする二人。

 ほかのお客がいないのをいいことに、それぞれの武器を取り出して……。

 ゴーン!

 見かねた店長が厨房から出てきて、二人をお盆でたたく。

 非常にいい音がした。


「うちは日替わりお弁当セットがおすすめだよ」

「あ、じゃあ、それにします」

「そこの二人は、さっき言ったのを注文にするからな」

「わあ、トントン定食好きなのよね!」

「マジっすか」






魔「ハワード氏、化けの皮が剝がれるの巻」

斧「墓穴掘ってやんのー、ウケるー」

舟「煽るな!」

ア「で、ラリッタ丼には何が入ってる訳?」

剣「すずめの焼き鳥的なヤツじゃね」

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