F-20 グランドレイド2
グランドレイド
友だち100人できるかな
ゴトン、ゴトン。
ゴトン、ゴトン……。
馬車は揺れる。
『大丈夫? 酔い止め送ったほうがいい?』
「……ううん、大丈夫」
馬車のなかには四人の冒険者。
エルナ以外の三人は顔見知りらしく、話が弾んでいる。
そのなかで取り残されたエルナは、この異質な雰囲気に小さく縮こまるしかない。
ヴィジュアルイリュージョンこと、見た目装備のメイスをぎゅっと握る彼女の姿は痛々しい。
それを遠くの、目的地レイナンの街より、はるか遠くで見守る魔法使いは眉を八の字にした。
『現地スタッフが入り用か?』
『誰を送り出すつもりだよ』
『黒いの』
黒いの、とは斧戦士の分体の黒トキワのことである。
省エネモードだと、黒いスライムのような姿をしている。
性格は温厚とは言い難く、彼女を傷付けるモノを許しはしない。
そんな彼を、何故派遣しようとしているのか。
それは、彼がモンスターっぽい容姿をしているからに他ならない。
安易な理由で転送されそうになっている黒トキワは、抗議の意を込めて机を叩いた。
べしべし。
そんな愉快な音が聞こえてくるというのに、エルナの表情は晴れない。
いよいよ、斧戦士が現地スタッフを送り出そうとしたそのとき。
馬車が止まった。
「……?」
『誰か来るようだ』
『なるほど、駅なんだな』
『最寄り駅が車で30分のところにあるわたしとしては、バス停と言ったほうが馴染みがある』
『おまえのリアル事情はどうでもいい』
舟長が斧戦士に真っ二つにされ、エルナの視界から消える。
しかし、その変化にエルナは気付けなかった。
乗り込んで来た女性冒険者が、エルナのすぐ近くに座ったからだ。
そして、女性はエルナに話しかけた。
「あなた、見ない人ね。どこに行くの?」
「あ、えと、レイナンの街の、グランドレイドに参加しようと思って……」
「あら! 奇遇ね! 私もグランドレイドに行くのよ。良かったら途中まで一緒に行かない?」
「あの、いいんですか?」
「いいも何も! わたしはサロメ。弓補助士よ。あなたは?」
「ヒーラーのエルナ、です。よ、よろしくお願いします」
魔「いい人が現れて良かったね!」
舟「偶然か? やけにいいタイミングで……」
ア「せーんーちょーうー?」
剣「いやあ、エルナが元気になってめでたしめでたしだぜ」
斧「今回ばかりは偶然だろう。おれは何もしてない」




