M-039 トランスレイション
トランスレイション
翻訳魔法
「まず、この辞典を真ん中にセットします」
新しい魔法ができたと、その実践をしている女性は、なんと、魔法使いだ。
※この場合の「魔法使い」は職業名の方である。
それとは別に、常日頃から魔法使いと呼ばれている彼女は、舟長に向かってこの魔法をアピールしていた。
「左側の台になんて書いてあるのか分からない本を、右側の台に真っ白なノートを置きます」
「翻訳だからって、そんな正体不明のものでいいのかよ」
「なんで?」
「古代人の日記とか気まずいだろ」
「一応、図書館の魔導書って書いてあるところから持ってきたんだけど……」
「誰かが間違って置いちゃった可能性は?」
「なきにしもあらず。だけど、さっきから疑いすぎじゃない?」
「思ってもみないところでポカミスするのが、おまえの十八番だろ」
「そんなの十八番にした記憶ないです」
すっかり整った魔法のセットを杖で叩く。
えいやっ。
すると、魔法の翻訳が始まった。光輝く風が、二つの本の間を行ったり来たりしている。
「あとは待つだけさ」
「待つってどのくらい?」
「分からん! 終わるまでかな」
「……またこのパターンか」
グラスカッターのときもそうだったが、魔法使いは時間に頓着しなさすぎだと思うのだ。
しかも、このセット、透明だから見映えはいいのだが、なにせ大きい。
はっきり言って邪魔だ、と舟長は思った。
魔「これで、学校の宿題も楽々ね」
舟「翻訳っていうからてっきりしゃべる方かと」
魔「リアルタイムで発動し続けるとか、無理ムリ! どれだけSPがあっても足らないよ!」
舟「じゃあ異世界旅行者はみんな無限のSPを持ってるんだな」
魔「いやまあ、簡略化されてたり、SPを回復させるアクセサリーでも持ってたりするんじゃない?」




