F-14 ボッチテリトリー
ボッチテリトリー
一人でできるもん
無事、ケビンたちの目的が達成され、エルナ+五人は帰路に着いていた。
女の子四人で盛り上がる話。
ケビンはハブられた。
「五人ボーナスすごいですね」
「そうでしょ? あなたもパーティー組んだほうがいいわよ」
「うーん、固定で組むのは……。野良でいいかな」
「野良!? あなたぐらい素晴らしいヒーラーなら、どこでも引っ張りだこだと思うけど」
「私も、そう思います。その、ギルドで紹介してもらうのはどうでしょう……?」
絶賛されるエルナ。
しかし、いつまでもこの理想郷にいる訳にはいかないエルナは、やんわりと断るしかなかった。
いつか去らなければならないこの世界に、くさびを打ち込むことはできない。
そうとも。
エルナは現代世界に戻って、簿記の勉強をしなければならないのだ。
「えーと」
『一人のほうが可動性いいからねえ。なんて断ろうか』
『隣の大陸に友だちを待たせてるからって、言っとけばいいんじゃね?』
『あちこち行くには不便だからな。パーティーがいると』
『エルナちゃんがリーダーになって、ほかのメンバーは全員サブ行きでいいよ』
『ひどいパーティーだな』
サブパーティーにメンバーをぶち込むリーダー。
もうそれ、最初からソロでよくね?
ちなみに、サブパーティーというのは控えメンバーのことであり、某有名ゲームになぞらえると、馬車行きのことである。
さて、話を戻そう。
言いよどむエルナに、ケビンが加勢する。
「何かしら理由があるんだろ。あまり詮索するのは感心しないぜ」
「うっ、ケビンに言われるとは思わなかったわ。エルナさん、ごめんなさい」
「い、いいえ! 気にしないでください。でも、乱入があると不便じゃないですか?」
「そう? ドロップ率がよくなるから、私はあまり気にしないけど」
「初心者の寄生なら大歓迎よ。私たちも弱かった頃はそうしたもの」
五人ボーナスを得るために、そして効率よく敵を倒すためには、大人数で挑んだほうが有利。
そんな常識があるために、実際ソロで戦う人は少ないらしい。
ソロと名乗っていても、一人でモンスターと相対しているだけで、人が加勢してくる。
エルナ的には、あまりありがたくないときもあった。
「回復量の確認をしたいときは、人が入ってくると困るんです」
「ああ、そういう用途で! あるわよ、そういう魔法」
「ボッチテリトリー、ですよね? あります」
ボッチテリトリー?
エルナはその名に驚いた。
こっちにも『ぼっち』っていう言葉があるんだ、と。
あと、なんだかディスられている気がするが、たぶん気のせいだろう。
ソロクエストとか、もっと違う言いかたがある気がするけど。
「エレメンタルファクターの調整とか、ヘイト管理とか、ね」
「ヒルダも属性の違う武器、どっちが強いか、ってやってるわね」
「虹枠の属性一致が強い……んですけど、レア度の高い装備が揃ってないので」
「属性ごとの大ダメージが揃わないと、大変ですもんね」
金枠の有効属性武器と、虹枠の等倍属性武器。
相性的に見れば、有効属性武器を使ったほうがいいに決まっている。
だが、現実はそう簡単に、最適解を出せるはずもなく。
金枠は全体のステータスが低く、ダメージ量も少ない。
だから、弱点を突ける属性でなくても、レア度の高い武器を選択したほうがよかったりするのだ。
「エルナさん、詳しいですね……。やっぱソロってすごいなあ」
「たまに魔術師もサブでやってるので」
「ジョブの掛け持ち……? すごい、装備が足りなくなりそう」
「えへへ。実は、かつかつです」
魔「ボッチテリトリーは、絶対乱入されない特殊なバトルフィールドだよ」
斧「任意のタイミングで逃げられるから、検証にぴったりだな」
ア「例のごとく、ボッチテリトリー!って叫べばいいんだね」
舟「別に、叫ぶ必要はないと思うが」
剣「ちょっと名前が名前だけに、叫びづらいしな」




