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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
隣の大陸編(Fシリーズ)
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F-09 トレードボックス


トレードボックス

交換所は一つしかないので




 とある日。

 もう一週間ほど異世界にいる少女から尋ねられた。


「そろそろ帰りたい……」

『ん。分かった。斧戦士さん、出番だよ』

「えっ、そんなにすぐに帰れるんですか!?」

『最適な時間は、叫んだ数秒前ぐらいでよろしいか』

「えーと」

『って感じで、斧戦士さんがぜんぶやってくれるから、いつでも帰れるよ』


 少女にそう話しかける魔法使い。

 そろそろ聞かれるタイミングだとは思っていたのだ。

 ゲームのログイン、ログアウト並みに簡単であることを告げられた少女は、しばらく悩んだ。

 いつでも帰れる。

 それに、現実の時間との誤差も少ないみたいだし……。

 だったら。


『もう少しいてもいいんじゃない?』


 親友の悪魔の囁きが、少女の背中を押した。


 という訳で、異世界生活を満喫する少女。

 好きなだけゲームみたいに遊んでいていいし、愉快な知り合いも増えたし……。

 ちょっとだけ、現代世界に戻ったとき、以前のように暮らしていけるかが心配だが。


「ケビンさんはここで活動してるって言ってたね」

『どこかにパーティメンバーがいるのかも』


 少女はココの村から出て、セミナの街に来ていた。

 セミナの街は、街とつくだけあって、ココの村よりずっと大きい。

 市場があって、いろんな人が出店している。

 その一角に、人が多く集まっている場所があった。


「なんだろう?」

『冒険者の人が集まってるみたい』

『交換所って書いてあるな』

『なんで隣の大陸の文字を読めるのかは突っ込んじゃいけない』

『そういうこと言うから、気にしちゃうんだろ』

『動画のネタバレ注意のコメントとかと一緒ですね』

『ファンタジー世界に存在しない名詞を出すのはやめろ!』


 だんだん脱線し始めるミニキャラたち。

 少女はうるさい画面端を華麗にスルーした。

 賑やかで楽しい人たちだけど、ずっと付き合うのはちょっと疲れるのだ。


「すみません、なにをしているんですか?」

『おお、暇そうな人発見』

「あ? トレジャーアイテムの交換だよ」

「トレジャーアイテム?」

『ウロコとか牙とか、各属性の珠とかかな』

「ああ、なるほど。じゃあ、今は持ってないからやめとこうかな」


 暇そうな冒険者は、ちょっと奇妙な少女に眉根を寄せた。

 こいつ、いま一瞬、会話変じゃなかったか?

 自分で聞いといて、誰としゃべってるんだよ?

 しかし、それ以上聞くことはできなかった。

 少女が離れていったからだ。


「もしかして、この辺のモンスターはトレジャーアイテムも落とす……」

『みたいだね。ちょっと持ってきたから、試しに交換してみようよ』

「でも、ここは混んでない?」

『エルナちゃん、あっちにも何かあるみたい。……箱?』


 少女が魔法使いの指さす方向を向くと、ちょうど人が通りがかった。

 大きな盾を持つ彼は、ほぼ間違いなく冒険者だろう。

 彼は、トレジャーアイテムを手のひらいっぱいに乗せ、なにやら数えている。

 無事数え終わると、トレジャーアイテムをすべて箱のなかに入れた。

 数秒して、ぽむっ☆という可愛らしい音がして、箱のなかから何か飛び出してきた。

 それは、ゴールド枠の防具だった。


『ああ、そういうね……』

「ぴったり数通りじゃないといけないんだね……」






魔「並ばなくていいけど、ちゃんと自分で数えなきゃだめってことね」

舟「てか、途中でさらっとアイテム創造してなかったか?」

魔「え? 斧戦士さんがくれたよ?」

舟「こっちの大陸には存在しないものをどうやって渡したんだよ?」

斧「魔法使いさんのためなら、なんでもできーる、よ?」

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