F-08 トレジャーフォール
トレジャーフォール
驚きのガチャシステム
すっかり異世界人に馴染んだ少女は、こないだの青年とともに歩いていた。
目的地は、宝の滝。
言ってみれば分かる、と言われ、少女はのこのことついていった。
「いやあ、まさか容姿を変えてるなんて、想像もしなかったぜ」
「えーと」
『黒髪は珍しいからね』
「黒髪の人があんまりいなかったので」
「確かに。言われてみりゃ珍しいかもしれないけど、冒険者なんか、出身地関係なくあちこちにいるからな。気にしなくてもいいんじゃね?」
「でも、好きな人に合わせたかったんです」
「好きな人……だと!?」
青年は動揺している。
ま、こんな可愛らしい冒険者、めったに見られないし、心惹かれていたのかもしれないが。
残念! エルナには憧れの人がいるのだ。
『憧れの人、と書いて、自分のキャラクターと読む』
『自アバターかよ。勝てねーな、それは』
『可哀想なケビン氏』
『初登場の名前。を、エルナから言ってもらえない悲しみ』
『余計なお世話だって言われるぞ』
そんな残念なオチに気付かず、青年は動揺から立ち直った。
「うん、ともかく。エルナには恩があるから。それを返そうと思って」
「恩?」
「行けば分かるよ。……ブルーコイン一個あって良かった」
「???」
さっぱり分からない少女は、青年に手を引かれて、宝の滝に来た。
壮大な滝だ。
轟音で周りの音があまり聞こえない。
青年は、用意してあった青いコインを少女に渡す。
「滝に投げるんだ。思いっきり」
「わ、わたし、運動苦手で……!」
『オートスコープを使うんだ!』
「お、オートスコープ!」
青いコインが滝のど真ん中に吸い込まれていく。
少しして、周りが静かになった。
滝のなかから現れた光は、虹!
レインボーの枠が付いた装備が飛び出してきたのだ。
最高レア度の装備品に、青年と少女がびっくりしていると。
後ろに並んでいた他の冒険者から拍手された。
「おめっとさん!」
「いいなあ、俺もあれ欲しい」
「頑張ってダンジョン周回しろ」
「なになに~?」
「後ろ詰まってんだから、はやくどけよ」
二人は慌てて、その場を離れた。
魔「ビギナーズラック」
舟「ほら、チュートリアル中のガチャは良いのしかでないから」
ア「割と使えるのが出るよね」
剣「まんなかに当てたのと、レア度は関係あるのか?」
斧「残念ながらありません」




