M-038 レインボーリーフ
レインボーリーフ
紅葉させる魔法
「ふー寒いね、今日」
「おはよう、魔法使いちゃん。今朝は凍結防止のヤツ入ってたから」
「おーい世界観しっかりしろ」
舟長が嘆くなか、みんなでテーブルを囲って朝御飯にする。今日はパン派の魔法使いさんがお寝坊だったので、ご飯と味噌汁のセットだ。
「窓の外なんか見てどうした?」
「いや、この辺木がないから秋が来たのかわかんないなーって」
「紅葉がみたいの?」
「うん」
相変わらず分かりにくい記述をする人である。魔法使いという人物は。
「んー、じゃあ今度ロデス方面にでも足伸ばす?」
「ロデスって花火大会の場所か。紅葉も有名なのか?」
「いや、聞いたことないな。単純に郊外だからありそうだが」
「うーん、人がたくさんいるところは苦手なのだ」
魔法使いが苦言を申し立てる。もっと静かに一人っきりでひっそり紅葉を楽しみたい。それが魔法使いの願いである。
「木を調達するにも、今からじゃ遅いな」
「そうだ、ツリーシードは紅葉しないのか?」
ツリーシードは、いつかの魔法学園での宿題である。
魔法使いが一から作った魔法で、今では重要施設の周りに街路樹として生えていたり、冒険者のみなさんの壁として活躍していたりする。地味に功績を上げている魔法なのだ。
「あれ、常緑樹なんよ」
「マジかよ、詰んだな」
「絵の具かなんかで塗るわけにもいかないし」
「じゃあスプレーでシューって」
「道具の問題ではない」
「ランプみたいにオンオフ出来ればいいのにね」
「それだ!」
魔法使いが叫んだ。
「それって?」
「あ」
「オンオフ、それが鍵だよ!」
魔法使いは尚も叫ぶ。それからどたどたと階段を駆け上がり、朝食中だったことを思い出して戻ってきた。
「これ食べたらやるの」
「まあ、止めはせんが」
「ヨーグルトもちゃんと食べなよ」
「フルーツもあるよ」
「早く食べ終わりたいのに……!」
魔「できました。これがその魔法です」
舟「レインボーリーフか。悪くないネーミングじゃねーか」
魔「周りの木々を参照して三色ぐらいのグラデーションを生み出すよ。効果時間は1時間」
斧「緑・黄・赤ですね」
舟「レインボー(三色)」
魔「ツリーシードにかけて楽しみました」




