F-03 エイトウェポン
エイトウェポン
SPもMPもありゃしない
『それでね、移動方法なんだけど、ワープの魔法を作るのが面倒そう……げふんげふん。難しそうなので、歩いていこうと思います』
『おい、おまえ、いま面倒っつっただろ』
『余計なことを言う舟長は成敗!』
『唐突なジャパニーズパフォーマンス』
『エルナちゃん、こいつらのテンションについていかなくていいからね?』
少女の視界はにぎやかだ。
五つの人形が口々に喋っている。
人形の頭の上には、白い文字。
そこそこゲームをする少女にとって、それは分かりやすかった。
ユーザーネーム。
何故か、みんな職業名(?)なのが不思議だが。
『とりあえず、森の奥に進んでいこうか』
『ああ、奥まで行ってボスを倒せば、強制的に街まで戻れるな』
『異世界初心者の子にそんな無茶させる訳ないでしょ』
『エルナ、木の根っこに気を付けろよ?』
『そんな、魔法使いさんみたくアルティメットドジっ子じゃあるまいし』
少女は魔法使いが指さす方向に進む。
しかし、異世界は危険がいっぱい。
たとえ、木の根っこを避けれたとしても、次の困難が差し迫る。
『嘘、モンスター!?』
『れ……エルナちゃん! 構えて!』
ガオー。
凶暴化した森の住民が、少女を襲う。
武器を持たない少女はここで冒険の終わりを知る……訳がない。
ハッピーエンド主義者の魔法使いが、そんなことを許すはずがない。
『エイトウェポン!』
魔法使いの詠唱によって、少女の視界に新しいウィンドウが開く。
アイコンがはまった八つの枠……。
ああ、これは言われなくても分かる。
少女はその一つに手を伸ばし、アイコンをタッチする。
ウィンドウを退かすと、目の前には選択したアイコンそっくりの武器。
少女の手が武器を掴む。
「終焉の花よ!」
少女の身体が勝手に動く。
選んだ武器を思い切り振り回し、掲げる。
紫色の光がモンスターを貫き、少女のHPが回復した。
モンスターは宝箱を落として、去っていった。
E「うーん、中身は。……要らないかな」
舟「ドロップは宝箱でか……しかも素材じゃないし。武器だし」
剣「結構、システムが違うなあ。同じ異世界とは思えねーぜ」
魔「大陸が違うと、使ってる魔法体系も変わるらしい」
斧「ちなみにここは、おれたちのいる大陸の隣の隣」




