M-037 モンスタータング
モンスタータング
動物たちと話す魔法
「誰だこいつ……」
「えさよこせー」
「やめて殴らないで」
「あの斧かっけぇ」
「後ろにいる女の子チョー好み」
「あれ男じゃね?」
「!?」
以上が、ブタ小屋に入ったときの彼らのセリフです。
杖を掲げていた魔法使いが珍妙な顔つきで座り込む。
「まあ、なんだそのドンマイ」
「選ばれなかったからってそう気落ちするもんじゃないさ」
「アイツ、相当目が肥えてるから」
「ちげーよ、何の心配してんだ、家畜ども、丸焼きにしてやる!」
突然暴れだした魔法使いに驚くSK。とりあえず丸焼きだけはまずいので、杖を取り上げて拘束する。
そのときだ。杖を持っていたアサシンが苦いものでも飲み込んだ顔になる。
彼女にも聞こえたのだ。ブタさんたちの声が。
「氷付けもいいと思わない?」
「えっ、アサシンさん?」
「キレてる?」
「キレてるキレてる。なんでかしらんけどキレてる」
ひそひそ話し合う男三人。剣士が杖を拾った。
「あのなあ、オレは男だぜ? 髪が長いからって斧戦士だって長いだろ、ほら、こいつ」
「やはり丸焼きに!」
「魔法使いもそんなに怒んねーの。オレは気にしてねーし」
「うーむ。慈愛の心が剣士を女性らしく見せている、とか?」
「知らねーけど、あの杖誰が持つ?」
「おれが持つと、輪切りにしたいとか言っちゃうかもよ?」
「オレが持つか」
と、舟長が言って、杖を拾い上げるが、すぐに離す。それから壁の方を向いてぐずぐずと泣き出した。
おおよそヘタレだの臆病者だの言われたのだろうが、メンタル弱すぎである。
「こんなものー!」
魔法使いが杖を折ろうとするが、レア素材を使って仕上げた魔法の杖はそうやすやすと曲がってくれない。
「魔法使いさん、一端、ここから出るというのはどうだろう」
斧戦士の提案に全員が頷いた。
これで五人の未来も、ブタ小屋の何十頭ものブタさんたちの未来も、平和になった。
「二度と使うもんかー!」
魔法使いさん以外は。
魔「精神感応と動物舌の合わせ技!」
舟「テレパシーの方出てねーし」
魔「精神感応は動物と話せず、動物舌の方はモンスターと話せない」
舟「合体して動物ともモンスターとも話せるようにしたのか」
魔「結果はさんざんだったけどね」




