M-361 モイモイ
モイモイ
自動果樹収穫魔法
「八字熟語!?」
「いや、四字熟語+四字熟語かもしれん」
アサシンとその恋人舟長が、真剣に悩んだその日の朝……。
スペルメイカーとして名を馳せる魔法使いは、ゲームに勤しんでいた。
そう、この魔法使い、この世界では珍しいゲーマーである。
異世界では、外の世界のほうが不思議や冒険にあふれているので、ファンタジーを売りにしたゲームはそんなに売れない。
そんなマイナーなジャンルで遊ぶ彼女は、異端者であった。
「ワインを作るゲームだって!」
「ほう。シミュレーションゲームか? 珍しいな」
「ううん。収集要素があるRPGだよ、たぶん」
「たぶんってなんだよ」
「だって、まだ未プレイだもの。知らないし」
そういう問題だろうか。
たまに作者が意図しない方向が楽しいゲームもあるので、なんとも言い難いのかもしれない。
「わあ、なんか黄色い実がたくさんなってる!」
「黄色? 梨かりんごか?」
「空想上の物語に、そんなものがでてくるとでも?」
「おま……ワイエースのファンはやめたのか」
「ごめんなさい。りんごだったね」
魔法使いのマイフェイバリットゲームは、回復アイテムがお花や果実なのだ。
ボス戦中に、りんごしゃくしゃく食ってるとしたら、相当な心臓の持ち主である。
お花は……ほら、香りをかぐだけでリラックスするって言うから……。
「あ、見て。エンターキー押したら、全部収穫できた!」
「こんだけ木があるんだから、毎回一個ずつしか入手できないんじゃめんどうだろ」
「貴様、ワイエースを愚弄する気か?」
「急になんだよ。だいたい、あれは三個までしか持てないからだろ」
正しく反論された魔法使いは、きゅーとうなった。
しかし、ここで静かにならないのが彼女たる所以だ。
「よし、名前はモイモイだ!」
「は?」
魔「木の前で、魔法を発射! 自動収穫だよ!」
剣「良い子のみんなは、人ん家でやらないようにな」
ア「一瞬で収穫される系の魔法なら心配だけど、どうなんだろうね?」
舟「それが、一個収穫するのに結構時間がかかるんだ。だから、心配無用だぜ」
斧「……これって二字熟語の集まりじゃないの?」




