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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
本編(Mシリーズ+Aシリーズ)
386/527

M-359 ジュース


ジュース

それは魔法使いの夢




 机の上に、りんごが一つ。

 赤い果実がごろりと転がっている。

 魔法使いは、りんごを左右に転がしながら歌う。


「りんごー、りんごー」

「相変わらず音痴なヤツだな」

「まあるいりんごー」

「聞いてないな。まあいいか」


 舟長が魔法使いの隣に座った。


「おい、舟長。そこ、おれの席」

「反対側があるだろうよ」

「いや、そっちはボクの席だからね?」


 階段を二人が降りてくる。

 舟長の恋人、アサシンと。

 魔法使いの恋人、斧戦士だ。


「りんごっごー」

「ああ、魔法使いさんはいつでも可愛いね」

「このりんご、台所のやつかな?」

「今日の昼あたりにでも食べるか」


 そう舟長が言ったときだった。

 ご機嫌に歌っていた魔法使いが、りんごを抱きしめたのだ。


「めっ!」

「何故、オレが怒られる立場なのだろうか」

「これはジュースにするの!」

「ジュース? ああ、ブロックでも使うのか?」


 ブロックというのは、圧縮魔法の一種で、物体を強制的に正方形にする。

 詳しくは、M-101 ブロックを参照してほしい。


「いいや。握力を上げて、りんごを潰す!」

「斧戦士、出番だぞ」

「わーい」


 斧戦士は意気揚々とりんごを掴んだが、頑張っても割れない。


「腕力とは違うのか」

「これ、オリハルアポーだからじゃない?」

「なんだその、食べられなさそうなりんごは」

「オリハルコンの植木鉢に植えて育ったりんごらしいよ」


 斧戦士は困って、魔法使いを見た。

 魔法使いは自慢げに鼻を鳴らしている。


「そこで、この魔法だよ。その名もジュース!」

「どんだけジュースが飲みたいんだ」

「ジュースは味方単体の握力をぐーんと上げるよ!」


 魔法使いは斧戦士に向かって、ジュースを唱えた。

 斧戦士はりんごを握る。

 りんごは無事、粉砕。

 斧戦士を含め、四人は、りんごの汁をかぶった。






舟「すごい勢いで、汁が飛んできたんだが」

魔「あっさり壊れちゃったねー」

ア「シャワー浴びてこよっと」

斧「魔法使いさん、りんご、あーん」

剣「ハブられたぜ」

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