M-357 トリップワールド
トリップワールド
旅行はしません
もう、テンションを上げるしかない。
魔法使いは、キラキラと目を輝かせる女の子たちを見て思った。
彼女たちは学園の生徒。
もっと言ってしまうと、魔法使いは彼女たちの先輩に当たった。
「あのかっこいい銃士の人が彼氏なんですよね!?」
「馴れ初めを教えてください!」
「どうやって射止めたんですか?」
悪意のない言葉。
魔法使いは腹をくくった。
彼女たちにバレないように、素早く呪文を唱えた。
トリップワールド!
「えーとだね。うん、斧戦士さんは大切な人だよ」
「斧戦士さんと初めて会ったのは、しょ……10歳ぐらいかな」
「あの頃は、斧戦士さんもおとなしい子でね……」
語り始めて30分。
魔法使いは、斧戦士への愛を語り続けている。
「どうして、名前で呼ばないんですか?」
「なんでだろうね。恥ずかしいのかな」
「きゃあ。素敵な話ですね!」
「そういえば、斧戦士さんもわたしのこと名前で呼ばないなあ」
「二人っきりのときもですか?」
「うん。そうだよ」
と、魔法使いが答えたとき。
ぷしゅん。
何か音が聞こえて、にこやかに微笑んでいた魔法使いが傾いでいく。
「先輩!?」
「あ、あぶない!」
椅子から崩れ落ちていく魔法使いを支えた人物がいた。
斧戦士だ。
彼は、群がろうとする女生徒を目で追い払った。
それから、魔法使いを抱えて、どこかに消えた。
魔「頭が痛いよー。ぐるぐるする……」
舟「二日酔いか!?」
ア「舟長、怒鳴らないで! 魔法使いちゃんに響くでしょ!」
剣「……この二人は隔離しておくから、斧戦士、頼んだぜ」
斧「言われるまでもない」




