M-348 クイックホール
クイックホール
ついでに捕獲場所も分かる
「今日はうまいこと脱出できたぜ」
ご機嫌で歩く男。
サンドバッグである。
本名を教えなかったばっかりに、そう呼ばれている男は、脱走中。
唯一の居住地、牢屋を抜け出して、どこへ行くのやら。
「……あっち方面はまだ行ったことないな」
男が見つめるのは、牢屋の奥。
反対側に行けば、外に出られるゲートがあるのだが、男は無視した。
どうせ、そのうち捕まるんだ。
それぐらいだったら、まだ見ぬ世界を体験したい。
好奇心で身を滅ぼし、今の身分となった男は好奇心を最大にした。
「行っても行っても牢屋……」
しかし、男を待ち受けていたのは集合住宅のような、牢屋の列。
いい加減飽きが来たので、帰ろうとしたそのとき。
男の目は光を捉えた。
この近くに、人工的な光に照らされたエリアがあるらしい。
もしかしたら、もっと中枢に行けるかもしれない。
男の期待は高まった。
「ここか」
男が足を踏み入れると、そこは、書類の山だった。
「え? なにこれ。研究所?」
怪しいフラスコや、身体の部位が入ったビン。
読めない字で書き付けられたメモ。
まさに、そこは研究所だった。
奥のほうにはさらに部屋があって、そこはいくらか生活的であるようだった。
男はその先を覗こうとしたが、それは叶わなかった。
足元に展開される、黒いサークル。
男は吸い込まれた。
斧「サンドバッグ一丁、捕獲完了」
?「今日の冒険は終了か……」
斧「……なんでおまえ、おれの部屋に侵入してる訳?」
?「あれ、おまえの部屋なのか!? どう見ても研究所だろ!」
斧「研究所はもう何年も使ってないなあ」




