M-333 ウォールブレイク
ウォールブレイク
壁ドンの一種
「なあなあ」
珍しく、その日は男のほうから話しかけた。
いつも何考えてんだが分からない青年は、振り向く。
「こないだの二人組だけどさ」
「ちゃんと仲良くしてる?」
「オレは努めて仲良くしてるぜ? ただ、あっちがな……」
男は青年が派手にぶっ壊した壁の向こうを見つめた。
少年が寝息を立てている。
それをなんとか邪魔して起こそうとする黒い影。
しかし、行動はみな、謎のバリアに弾かれた。
「あれはおまえがやってるのか?」
「バリア? そうそう」
「他人のために行動した、訳じゃなさそうだな」
「オレがそんなことすると思ったかよ?」
「いや、冷静に考えなくてもないな」
バッサリ言い切られた男は、薄く笑う。
この連中ときたら、こっちが寝ようとしているのに、隣で騒ぎやがる。
自分の思い通りにならないことは最近多いが、睡眠ぐらい自分の好きな時間に取りたいもの。
男は、透けて見える、隣の牢屋に魔術をかけたのだ。
「でさ、なんでこれ、行き来できないの?」
そう、この壁、派手にぶっ壊れているように見えて、実は通行不可なのだ。
「そりゃ、本当にぶっ壊してたら、強度面に問題が出るじゃん?」
?「そういう問題か?」
斧「あの黒いの、邪魔だな。消滅させるか」
黒「ぼよんぼよん……ん、呼んだ?」
斧「呼んでない」
?「あのー、オレの話、聞いてる?」




