M-329 リアルイリュージョン
リアルイリュージョン
幻が真実を暴く
「ねえねえ、アサシンちゃん!」
「どうしたの、魔法使いちゃん?」
「あれやってよ、ほら、幻覚をバーッて広げるヤツ!」
そう言われて、即死兼幻覚使いのアサシンは困惑した。
どれのことだろう……と。
しかし、直近で、彼女に見せた幻覚と言えば、それは一つしかなかった。
リアルイリュージョン。
幻覚に囚われた魔法使いを探すために、使った魔法。
魔法使いにはあまりいい記憶がないはず。
アサシンは、少し言葉を濁らせた。
「もしかして、リアルイリュージョンのこと?」
「そうそう。もう一回見せてよ!」
「け、けど、あれは、なにかしら幻覚がかかってないと意味ないよ!?」
「じゃあ、わたしが幻覚をかけよう」
「いや、そんな簡単に言われると、ボクのプライドが……」
なんだかんだ言っていると、本当に魔法使いが幻覚を使ってしまいそうだったので、アサシンは慌てて呪文を唱えた。
素人の魔法使いに、幻覚魔法まで作られてしまっては、アサシンの立つ瀬がない。
なにより、自分のアイデンティティが減ってしまう気がした。
「リアルイリュージョン!」
まず、自身の周りに幻術を展開したアサシンは、期待に目を輝かせる魔法使いを見た。
わくわくしている。
アサシンは両手を広げ、それに合わせて幻覚の領域も広げる。
リアルイリュージョンは、魔法使いと、スカイアドベンチャーのお家を包み込んだ。
アサシンは、魔法使いを振り返って言う。
「ほら、なんにもないでしょ?」
「アサシンちゃん、あそこの壁、壊れてたっけ?」
「え?」
魔法使いの指さすほうを向くと、そこには確かに壁があった。
しかも、一部が崩れている。
付いている傷は、何かが刺さったあとのようだ。
「直し中なのかな?」
「白いレンガが積まれてるね……」
「誰だろ?」
魔法使いはそうやって首を傾げたが、アサシンは見当が付いていた。
ボク以外で、幻覚が使えそうなヤツなんて、ひとりしかいないじゃん!
斧戦士、なに家の壁壊してるの!?
「ねえ、他も見てみようよ!」
「そ、そうだね……」
魔「なにかしらのゲートがある。向こうは真っ暗で見えない」
ア「斧戦士め……。自分の部屋に作ればいいのに」
魔「あれ? こんなとこに部屋あったっけ?」
ア「これは、見ないほうがいいパターンかな。幻覚、解除っと」
魔「あ、なくなっちゃった。やっぱり部屋なんてないのになあ」




