表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
本編(Mシリーズ+Aシリーズ)
352/527

M-327 ウォーターマジック3


ウォーターマジック3

信じられるのは誰?




 最大限強化したリアルイリュージョンで、本来の姿を取り戻した壺内。

 真っ白な壁が延々と続くさまは、どこかのお城のようだ。

 しかし、アサシンは知っていた。

 この壺のなかで、どんな酷いことが行われていたか。

 ここは、決して、美しくきれいな場所ではない、と。


「ふう……これで、魔法使いちゃんを探せるね」


 どこまでも続くかと思われた空間も、本来の大きさを取り戻した。

 いまのアサシンなら、この壺の全体を見ることができる。

 右端のほうに黒い影。

 荒く息をついているのは、幻覚に怯える少女。

 仲間の――、いや、大切な友だちの魔法使いだった。


「はあ、はあ……」


 アサシンは安心感を与えるために、真正面から魔法使いに近付いた。

 うつむいている彼女には分からなかったかもしれないが。

 そっと抱きしめて、幻術の力を解き放つ。

 魔法使いをベールのように覆っていた怪しい気配が消え去る。


「アサシンちゃん……?」

「そうだよ。ボクだよ。ボクが来たからにはもう安心して」

「斧戦士さんは……?」

「あいつは、魔法使いちゃんのことを待ってる。さあ、会いに行こうよ」


 明るく話しかけたアサシンだったが、返ってきたのは強い拒絶だった。


「嘘! 斧戦士さんはどうして来てくれないの!? もう嫌!」

「ま、魔法使いちゃん……」


 アサシンは慌ててヒモを引っ張る。

 暴れる魔法使いをぎゅっと抱きしめて。

 早く、早く気付いて!

 アサシンの気持ちが揺らいだせいか、リアルイリュージョンの効果が一部途絶えた。

 黒い壁が迫っている。

 魔法使いと自身を覆う強固な幻術バリアを、黒い壁が侵食しようとしている。


「嫌、離して! 斧戦士さんじゃなきゃ、嫌!」

「……くぅ、斧戦士、なにしてるのっ、早く引っ張って!」


 アサシンが叫んだとき。

 スクエアゲートが大きくひび割れた。

 縦横に亀裂が入り、人間が通れる大きさにまで広がる。


「来た……! 魔法使いちゃん、ボクに捕まって!」


 アサシンの右腕が引っ張られている。

 否、右手が握る毛糸が引っ張られているのだ。

 アサシンは、左手で魔法使いの腕を掴んだ。

 壁が恨めしく二人を見ているが、二人はスクエアゲートのなかへ引き込まれた。

 ゲートのなかは、また黒一色。

 魔法使いが怯えるかと思って、アサシンは幻術を展開しようとするが。


「あ……ここ、斧戦士さんの……」

「あれ? ここは平気、なんだ。とりあえず、この宇宙空間みたいなの、なんとかならない?」


 アサシンの苦言が通じたのか、でこぼこ道が現れた。

 道は、ヒモが引っ張る先に通じている。

 アサシンは、魔法使いの手を引きながら、道を歩く。

 魔法使いの足取りは頼りない。

 あれだけ必死に逃げ回っていれば、そうもなるだろう。


(あれ? この道、魔法使いちゃんが通ったところだけ、白く光る……?)


 しかも、白く光ったところだけ、崩れ落ちていく。

 アサシンは、冷や汗が滴り落ちるのを感じた。


(え、なに、もしかして時間制限付き!? あり得ない、魔法使いちゃん、いまにも倒れそうなのに!)

「斧戦士さん……どこにもいないの……?」

「必ず会えるから! 心配しないで!」

(とは言ったものの……。ほんと、どうして助けに来なかったんだろ?)


 その答えを導き出すよりも早く、アサシンは見つけた。

 小さな四角い穴。

 斧戦士側に生成されたと思われる、スクエアゲート。

 アサシンはその穴に手をひっかけて、思い切り下へと振り下ろした。

 バリバリ、と破片が道と現世の床に落ちる。

 アサシンは、開いたわずかな隙間に、飛び込んだ。

 魔法使いの腕を強く握りしめたまま。






舟「アサシン! 魔法使い!」

ア「斧戦士っ、魔法使いちゃんのこと任せたから! ボク、疲れちゃったよ……」

斧「アサシン、すまん。魔法使いさんも、ごめんね」

魔「ばかばかばかー!」

剣「とりあえず、一件落着か? じゃあ、オレはこの壺でも片付けるかな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ