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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
本編(Mシリーズ+Aシリーズ)
34/527

M-032 イノセンスカード

 

 イノセンスカード

 無実を証明する




「ここは古びた洋館……偶発的に起こった大雨! 出来上がったのは密室殺人事件の現場!」

「現場言うな。まだなにも起こってないだろ」

「さあ、あなたはどうする?」

「無視かよ。自分の部屋に帰って寝る?」

「死亡フラグお疲れ様です」

「うん。で?」


 一通りの茶番が終わったのを確認して、舟長は魔法使いに聞く。

 茶番中の魔法使いは人の話を聞かないから困る。分かりやすくていいけど。


「魔法で無実を証明すればいいんじゃないかって」

「なんで何か起こる前提なんだよ……」

「だって、何か起こってからじゃ遅いじゃない」

「ここ、もう遅くね?」

「なんでそういうこと言うの? ここは出ないって聞いたよ?」


 二人がいるのは本物の洋館。それも古びて寂れた、もう所有者も誰だか分からないような館だ。管理する人がいなくなったここは、窓ガラスが割れ、さまざまな調度品も壊れている。

 何か起こってこうなったのは明白だった。とりあえず盗難とか。


「別にユーレ」

「あー、何にも聞こえなーい」

「お化けが出るような出来事とは限らないだろ」

「言わないでったら! ……え? ああ、うん、そうだね」

「ったく、よく聞けよ」


 悪態を吐く舟長。

 その瞬間、調度品の上にあった花瓶が突如割れる。文字通り飛び上がる魔法使い。何かいるんじゃないか、そう疑いたくなる。


「で、出てきたら聖属性魔法で倒す、出てきたら聖属性魔法で倒す」

「成仏させたれよ、元神官ならさ」

「浄化?」

「一撃死じゃねーか」


 説明しよう。浄化は神官系の中盤で覚える、消滅系スキル――魔法である。アンデット族だけを即死させる、経験値狩りのお供だ。失敗すると何も起こらない。


「と、とにかくイノセンスカードの効果は無実を証明するんだ」

「へえ。それが今回の魔法の名前か」

「魔法は嘘が吐けないからね。これはいい証拠になると思うんだ」

「それで、どう使うんだ?」

「イノセンスカードと唱えれば、無実なら、『わたしは無実です』ってプラカードが出ます。透明の」

「カードってそういう……」


 どこか呆れた声で応じる舟長。魔法使いはさっきとは打って変わって自信に満ちた表情で言う。たぶん、今は、恐ろしげな内装も見えていないに違いない。


「まあ、ちょうどいい。オレが使ってみてもいいか?」

「いいけど。ちょうどいいってなんだ?」

「イノセンスカード」

「無実みたいだね、舟長」

「ま、いまんとこ物取りも冒険者行為もしてないからな」

「やっぱそういうの罪の意識感じるの?」

「感じる訳ねーだろ。人の目の前で猫ババした回数数知れず。鋼鉄の心臓がなくちゃできないぜ」

「ふーん」






魔「少しでも罪悪感を感じていることがあると、直接関係なくても、『わたしは無実です』って出ないみたい」

舟「犯人じゃなくても共犯者だったら捕まるって訳か。悪くないんじゃね」

魔「それが、間違って妹のプリン食べちゃったって場合でもダメなんだよ」

舟「……魔法は嘘吐けないもんな、仕方ないよな」





ア「魔法使いちゃんと一緒でなくてよかったの? あの子こういうとこ嫌いでしょ?」

斧「心配は心配だが……おれがいるとよく寄るらしいから」

ア「寄る? ああ、霊的存在がね。見えてるの?」

斧「今、目の前を横切ったな」

ア「えっどこどこ?」

斧「……冗談だよ」

ア「冗談って口調じゃなかったでしょ! ねえ!」

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