M-310 ショートワープ
ショートワープ
いつでも脱出可能
「ねえ、ここ、ギルスがいたの?」
「そのギルスは、いま片付けてきた。ちょっと待ってて、今、外に出られるようにするから」
「ギルスは強いよー?」
「おれより弱いので楽勝です」
斧戦士は、牢屋に囚われるメルティナを見る。
別にこの少女に恨みはないし、魔法使いが気に入っていることから、斧戦士は彼女を外に出そうとしていた。
メルティナは、斧戦士の持っている円盤のようなものを覗き見た。
ずいぶんと薄っぺらい。
「よし。メルティナ、君の正式な名称を教えてくれ」
「せいしきな、めいしょう?」
「長い名前だよ」
「あー、分かったー。アルベティーナ・リク・キララストーン」
「ありがとう。登録は終わったよ」
斧戦士は人差し指で空間を裂くと、牢屋内に腕だけワープさせて、鉄格子の近くに円盤を置いた。
メルティナは、円盤に近寄った。
牢屋は冷たく暗い。
床は硬くて、あまり座り心地がいいとはいえない。
メルティナは斧戦士を見上げた。
「そこの上に乗って」
「いいの?」
「大丈夫。頑丈だから」
「はーい。えいっ」
円盤に乗ると、メルティナの姿は、下からほどけるように消え、斧戦士の隣に現れていた。
「行こう。魔法使いさんが待ってる」
「おいしいおやつはある?」
「もちろん。用意してある」
?「あのー、オレが乗っても反応しないんですけど」
斧「おまえは登録してないから出られないぞ」
?「ちっ、そんなにうまく行く訳ないですよねー」
斧「ところで、どうやったら、アルベティーナがメルティナになるの?」
?「知らねえ。メルティナは、そうやって呼ばねえと怒るんだよ……」




