M-031 EXPドレイン
EXPドレイン
撃たれたくない魔法
「EXPドレイーン!」
「なに!?」
「うぐっ」
「魔法使いちゃん!?」
「レベルが下がったから、ダメージも落ちるぞ!」
ある日、普通に冒険していたスカイアドベンチャーを襲ったのは、なんか綺羅綺羅しいモンスターだった。
なんだかやたらめったら反撃したい気持ちにされた、SKは欲望に任せて襲い返したのだが、それが間違いであった。
謎の攻撃が魔法使いに当たる。すると……グガガゴゴゴ。
「地の文どうした!?」
「あれ、レベルそのまま……?」
「魔法使いさん、無事だったのか!」
「待て、レベルが無事なら何の経験値が……」
舟長→魔法使い→斧戦士→剣士。
「っと、え?」
「セリフの順番?」
「地の文さん?」
「ハテナマークが一杯……」
「そんなこと言ってる場合か!」
舟長→アサシン→斧戦士→魔法使い→剣グガガゴゴゴ。
「明らかにおかしいぞ!」
「おかしいけど、どうして……」
「ハッ。もしや、わたしの執筆的能力の経験値がドレインされて、地の文に異常が出ているというのか!?」
「説明乙! だが、まさにそのようだな!」
「そんなこと……いや現にあり得てるんだからどうでもいいか」
「まさかこのまま、小説レベルも下がって、セリフオンリーになる可能性も否定できないってか!」
「実際、地の文がないからその通りだな!」
「もう一発来るぞ、備えろ!」
「どうやって?」
「避ければいいんじゃね」
「避けるほど、素早さがない人はどうすればいいですかー!?」
「こうすればいい」
斧戦士がががが。
舟長をぐわしと掴みががが。
魔法使いの前にががが。
放り投げたががが。
「ががが抜きだ!」
「簡単な謎解きだなあ」
「おまえら、のんきにはなしてるんじゃねーよ! いてっ。あたっちまっただろ!」
「舟長のレベルも落ちてない……。やっぱりこのEXPドレイン、レベルじゃなくて他の経験について影響を及ぼすものなんだ!」
「おれのはなしをきけよ!」
「あれ、舟長。一人称変じゃない?」
「ホントだぜ。カタカナっていうか漢字どうした?」
舟長の一人称はががが。
カタカナのオレですごごご。
「地の文がだいぶクリアになってきた!? まだノイズあるけど……」
「そうか、EXPドレインの効果は一時的なものなんだ! そうじゃなきゃ困る!」
「じゃあおれもまってればなおるってのか!?」
「漢字やカタカナの経験値が戻ってくればな」
斧戦士がががが。
冷たくいい放つががが。
「とりあえず倒してしまえばいいんじゃね」
「いままでもそれで解決してきたもんね!」
「ちょっとまて、それでもおれのじょうたいが、なおらなかったらどうするきだ!」
「かといって、全員が舟長みたいに歯抜けになるのを待つのか!?」
「だれが、はぬけだ!」
「まあ舟長のは紙面上で見ないと分からないタイプだし。しゃべるのには問題ないでしょ」
「ぐぬぬ……」
「エナジーフォース!」
「ベルセルクアタック」
「ちっ、しかたねえ、はらくくるか! オレもさんせんするぜ!」
「あ、一人称」
「なんだ、戻ってきたのか。つまらん」
「だれだ、つまらんっていったヤツ! だれだ!」
「おれですけど?」
「おのせんしか……ぐぅ、あきらめよ」
相変わらず、斧戦士には弱い舟長。極振り怖い!ってことかしら。
魔法使いには強気なのに、不思議だね。
「地の文帰ってきたァー!」
「そんなに喜ぶこと!?」
「わたしの文才が帰ってきたんだ。喜んで何が悪い」
「あっうん、ごめん」
「魔法使いキレてね?」
「たぶん、ボクが怒らせちゃったの」
魔法使いが声を張り上げ、不思議なダンスを踊りながら、喜びを表現する。モンスターはなんだか弱っているみたい……。踊りのせいかな。
「またか!」
「魔法使いさんのランダムダンス炸裂!」
「斧戦士さん、黙って!」
「サーセン」
よく分からない人はランダムダンスの項を参照だ!
クリック、クリック!
でも正直、これ、味方にバフ効果出てないから、ランダムダンスとは言いがたいよね。どっちかというと、奇妙な踊り系っていうか。
「そんなんどっちでもいいわ!」
「MONEYドレイーン!」
「なに、マニー……つまりおカネドレイン!?」
「な、ナンダッテー!?」
「おまえら、戦う前に全額銀行に預けただろ……」
「その銀行からパクられたとしたら?」
「なに!? オレの金を!」
「パーティーの金です」
守銭奴の舟長が覚醒した。
斧戦士の冷静なツッコミも聞こえないまま、モンスターに猛然と追撃を仕掛ける。
いつの間にかフル回復だ!
「舟長フツーに喋ってるね」
「ログ確認したら、漢字もカナカナも喋れるようになってた」
「チッ、つまらん」
「今日の斧戦士さんたらいつもより毒舌ね」
「それで済ませていいのか……」
攻撃は舟長に任せつつ
「おまえらも攻撃しろよ!」
「はーい」
「チッ、めんどくさい」
「斧戦士は舌打ちしないと喋れないように改造されたのか?」
「いいえ、これもEXPドレインの効果です」
「嘘かホントか分からないこと言うのやめてよ……」
怒られたので全員で攻撃を加えていると、敵が倒れていた。そして倒したモンスターからは当然、ドロップが……ない。
「こんだけ苦労させてドロップなしかよ……」
「やる気なくすよね」
好き勝手言って、スカイアドベンチャーは帰っていく。今日の冒険は終わったのだ。
魔「今回書きづらかったー」
ア「お疲れー」
魔「舟長のセリフをうっかり変換しちゃったり、地の文を書きたくなったり」
斧「その割りには決着点が決まらず終われなかったり」
舟「やめたれよ」




