M-030 スペルランドミー
スペルランドミー
乱れ魔法攻撃
「乱射!」
斧戦士がスキルを発動した。乱射、SP50、ランダムに六回当たるスキルだ。
敵が多すぎると当たらないこともあるので、基本、一体の敵に対して六回攻撃のスキルとして扱われる。
しかし、この日は違った。倒しても倒しても沸いてくる雑魚敵。痺れを切らしたSKのメンバーが全体攻撃を解禁したのはいつからか。
「ひょえー後ろから弾?がヒュンヒュン言うー」
魔法使いがびびっている。後ろから猛スピードで迫ってくる小さいなにか。まあ、怖がらずにはいられないだろう。
「大丈夫だ、システムは当たらないと言っている!」
「というか、味方に当たるシステムが作られてないっていうか」
「誤射とか作るだけ面倒そうだ。仲間が前にいるかどうか判定しなきゃならんし」
「だいたい弾の軌跡が急カーブを描いている時点でファンタジーとしかいいようがない」
まっすぐ飛ばない弾。別名、ホーミング弾とも。斧戦士は命中率アップを付けているので、よく当たるのだ。よく当たりすぎるとも言う。
「ボクらはほら、もともと後ろでビーム飛び交うバトルから来たから」
「銃口からビームが、うごご」
「飛び道具をビュンビュン飛ばしすぎなオレぃ」
「自分の投げた弾に当たる」
「それはない」
「凄腕という設定だからな」
「設定ね、設定」
「設定を強めて言うな!」
敵と戦っているのを忘れそうな応酬である。
この間も雑魚は湧き続け、既に斧戦士は銃から斧に切り替えている。全体攻撃の斧一閃だ。SPは20。どう考えてもこっちの方が効率が良いよね。いや最初は六体しかいなかったのよ。それで乱射で倒せたらラッキーだなって。
結果?結果はさんざんだった。二体しか倒せんかった。半数以下とかもう笑うしかないだろ。
「地の文担当の人、少し落ち着け」
「ぶっひゃっひゃっひゃ。泣ける」
「魔法使いおまえ……」
「笑ったうえに泣いたぞ、コイツ」
ぶっひゃっひゃっひゃ。
「そんな苛立ちを魔法にしてドーン! ランダムエナジーフォース!」
説明しよう。ランダムエナジーフォースとは、乱射の魔法攻撃バージョンのこと。効果は驚きの24回攻撃。魔法使いと地の文担当さん怒りのパワーが成せる技だ。
「乱れ魔法攻撃!?」
「なんだその……せつなさ乱れ打ちみたいな」
「これは怒り乱れ打ちだよね」
のんびりと会話が進む裏で、魔法の一撃を食らった敵がバタバタと倒れていく。中途半端なダメージでは倒しきれず、増えていく一方だった敵が、消えていく。
「ぎょわー」
「ぎょわーがなんじゃ、食らえっ」
魔法使いはうなるうなる、たくさんの雑魚敵を片付けた。片付けて片付けて、とうとう一匹もいない状態まで追い詰めた。
残るはボス一人だけだ。斧戦士が肉薄し、ベルセルクアタックで始末する。
やったのだ。とうとう敵を倒したのだ。
喜びに湧くスカイアドベンチャーの後ろで、倒したはずの敵がむっくりと立ち上がる。第二形態かと、迎え撃つ構えを解かない五人の前にそのテロップは出た。
≪インフィニティサモンを仲間にしますか?≫
「テイム……だって?」
魔「結局、せっかくの機会なので、テイムしました」
ア「名前はインフィちゃん。これからビシバシ鍛えてあげるから」
魔「この子は最強のテイムモンスターに仕立てあげるだ。誰にも邪魔させないよ」
斧「絶対防御とか覚えさせたら面白そう」
魔「まずはレベルをガンガン上げてステータスを積み上げるのだ!」




