M-029 ロングアーム
ロングアーム
のびーる腕
「誰か助けてー!」
「いやもうちょいで地面だから」
「言うほど助けてって場面じゃないよね」
「ま、オレらなら無事に地面に下りられるけどな」
「わたしは無理!絶対無理!」
「ぷらーん」
そんな阿鼻叫喚なことに、魔法使いがなっているのは数分前の己の所業が原因だった。
ついムカッと来たので舟長に魔法を撃ったら、避けようとした舟長が崖下に転落。助けようとしたアサシンと剣士が舟長を追い落下。魔法使いも何故か小ジャンプをかましたあとに落下。
そして出来上がったのが、連結した四人の人体鎖。それを斧戦士が支えている状態だ。
「ステータス的腕力のおかげでいつまでもぶら下がってられるけど、ぶら下がってるだけじゃ事態が進展しないよ!」
「説明乙」
「そうだ、腕力が700ぐらいある斧戦士なら、四人まるごと持ち上げられたりしない!?」
「腕力じゃ無理だな。まあな、持ち上げられるだろうが、それは超常現象なのでやめておく」
「おまえフリーズのときにもっとやばい無茶かましてただろ!」
できるが今はできないらしい。難儀な設定ですな。
「だったら、わたしの魔法の出番だな!ロングアーム、それにツリーシード!」
ロングアームで腕は伸びたりしないが、変わりに別のものが伸び、地面に着弾する。すると、そこからツリーシードが発動し、大きな木が生えてきた。
「舟長、そこの木に飛び移って地面へ移動するんだ!」
「わ、分かった」
「アサシンちゃん、剣士も! できるなら飛び移るんだ!」
「まあできるよ」
「余裕だぜ」
「で、わたしが……こんな高いところから下りられないよ〜!」
「考えてなかったのかよ!」
舟長の突っ込みが入った。
三人が近くからいなくなったせいで、魔法使いは余計に心細く感じていた。地面も遠ざかったし、ずっと逆さまなせいで頭に血が上るし。もうさんざんだった。
「で、おれが魔法使いさんを持ち上げれば良いわけね」
斧戦士の声が聞こえたと同時に世界が回転を始める。びたーん。魔法使いは地面に転がった。
助かったのだ。
舟「あのあと地道に崖を登るはめになったぜ!」
剣「そんなに怒らなくてもいいだろ?」
ア「余裕でできたでしょ余裕で。だから、魔法使いちゃんは何も心配しなくていいからね」
魔「……うん。ロングアームが伸ばしているのは、発動地点だよ。手元から手のひらが向いている方向に発射されるんだ」
斧「ツリーシードは地面に手を置かないと発動しないから、ロングアームで地面まで伸ばしたんだな」
魔「うまく使いこなせば、身体から離して魔法を撃ったり、足やお尻から魔法を撃ったりできるよ」
舟「ただし魔法は以下略ってやつだな」




