A10-284 ホット&コールド(邪)
ホット&コールド(邪)
時間経過では治りません
「おはよう、サンドバッグ」
「おはようさん」
「なんだ、起きてたのか。寝てたなら、ホムラモエールで焼いてやろうと思ったのに」
「ああ、そういえば、オレの完成品見てくれた?」
男は親しげに青年に話しかける。
青年も男と話すこと自体は嫌ではないらしい。
残念がりながら、魔法陣を背中に隠す。
「ってか、それ、自分の腕が燃えるヤツじゃん。どうやってオレを燃やすのさ?」
「おれの腕を燃やすだろ? 腕を切って、おまえのほうに投げる。これで燃えるな」
「この人、躊躇なく腕を切るとか言ってますよ?」
「さらに再生の力を付与すれば、永遠に燃えるからwin-winだな」
「win-winなんて存在しねーし、それはwin-loseだ!」
男がわめいている。
うるさくなってきたので、男を黙らせる手段を探す。
あった。
これなら。
きっと彼女も喜んでくれる。
「おまえのことなんか大嫌いだから、こうしてやる」
「なにその、急な反抗期……」
「仲直りの魔法、ホット&コールドだ」
「はあ? 絶対おまえそんなこと思ってな――急に身体が重く……?」
「せいぜい苦しめ」
「矛盾してる、この人! てか、これ……熱って嘘だろ!?」
仲直りする気なんかさらさらない青年は、高笑いをしながら帰っていく。
男は床に手をついて、ぜいぜいと喉を鳴らす。
床の冷たさが気持ちいい。
病気どころか、風邪すら引いたことがないってのに。
明らかな異常事態だった。
やけに症状が重いし。
男は床に倒れ込む。
明日になったら治っていることを信じて。
斧「……あれ、死んでる。なんで死んでるんだっけ? まあいいや」
斧「蘇生しなくちゃ。リバイブー」
?「ようやく生き返れた! なにあの病! 全然治らないんですけど!」
斧「しまった、おれ式で蘇生させれば良かった」
?「これ以上やられてたまるか!」




