M-294 デモンデテクール
デモンデテクール
悪魔召喚?
ここは、スカイアドベンチャーが通う学園がある世界とは違う世界。
暗くてじめじめした廊下には、牢屋がたくさん立ち並んでいる。
とは言っても、なかにはほとんど人はいない。
以前は、人間をぎゅうぎゅう詰めにしていたものだが、衛生管理がめんどうで、片付けもめんどうだったから、ついぞやめてしまった。
「おなか減ったなあ」
囚人を集めて、人体実験だとか食料だとかにしていた青年が立ち止まる。
そこは、誰も入っていないかのようにみえる牢獄だった。
青年は鉄格子の間に腕を入れ、なにかを引っ張り出す。
掴んでいるのは無色透明の、いや、ほんとうに掴んでいるのだろうか?
「うん、小悪党」
悪ければ悪いほど、それは美味とされている。
小悪党のそれは、軽くておやつにはぴったりだ。
青年はもう何匹かそれを掴むと、牢獄唯一の人間に会いに行く。
ヤツは彼女を傷付けた憎き男だ。
「食べる?」
「なにを?」
「これ」
差し出された手のうえには何も乗っていない。
男は鉄格子の奥で、手を見つめることしかできない。
というか、え、何も乗ってないよね?
男が疑心暗鬼になるのも当然だった。
この青年と来たら、男を虐げることに人生をかけている。
食べる、なんて言ったら、どんなに嘲笑うことか。
結局、男は曖昧に笑みを浮かべることにした。
「えっ、ちょっとよく分からないです」
「これは人間の魂」
「たま……しい?」
「英語でいうところのソウル」
「と、共食いですか……」
ドン引きしている男には構わず、一匹の魂を牢屋の内側に入れる。
逃げ惑う魂には目もくれず、青年はスペルを唱えた。
「デモンデテクール」
「え、なにその、トイレ用洗剤みたいな名前……ってうわわっ」
牢屋の隅で魔法陣が光っている。
そこから、小指よりも小さい、小人サイズの虫歯菌が出てきて、男のふとももに噛み付いている。
あんまり痛くない。
くすぐったがる男を見ながら、青年は魂を食らう。
「こんなに美味しいのに、魔法陣は美食家だなあ」
斧「おまえは大悪党だから、もっと強い悪魔が召喚できるはずだ」
?「もしかして、生贄になったら、この牢屋から解放されるとか?」
斧「残念ながら、ガッツリ蘇生させるのでご安心ください」
?「やだー永久機関じゃんー」
斧「ふむ」
?「待って、ガチで考えないで」




