A9-287 クロースコレクション(邪)
クロースコレクション(邪)
ただの嫌がらせ
「やあ、サンドバッグ」
「超ニコニコしてるんですけど。何の用でございますか」
サンドバッグと呼ばれた男は、牢屋の奥から返事をした。
鉄格子を挟んで反対側には、緑髪の青年が魔法具を持って立っていた。
その魔法具はジェムという安価な素材で出来ていて、使い捨てである。
「また彼女が作った魔法具かよ?」
「そうだけど、おまえにはやらない」
「えっ、じゃあ、なんでここに来たの」
「いいニュースを伝えるためにな」
男は頭のすぐ際に刺さった槍を見つつ、思った。
悪いニュースですか、はいはい、分かりましたよ。
青年に負けたことで牢屋に入れられた男は、頻繁に彼から嫌がらせを受けているのだ。
串刺しになったり、変な液体で溶かされたり、プレスされたりした。
死んだり、死んだり、死んだり、死んだりもした。
しかも、最近は、夢のなかにまで侵入して、男の精神をむしばんでいる。
「この魔法具は、服を一瞬でしまうことができるんだ」
「性的犯罪が増えそうな魔法具ですね」
「一般には公開してないから、大丈夫だ」
「いや、オレにとってはなんにも大丈夫じゃない」
冷や汗が垂れた。
ちょっと前までは、夢のなかで大暴れしているだけだったのに、現実まで侵食しようとしている人物がいるのだ。
ちゃんと実体化しているので、男は大迷惑をこうむっていた。
夢の世界の住民ということで、殺しても殺しても出てくるし。
「それで、これをあの二人にあげました」
「ふざけんな、死ね」
「マジックアイテムなので、夢のなかでも使えるみたい」
「おい馬鹿やめろ」
「さらに、夢のなかの力、DPでいくらでも出せるので、一個渡すだけで無限増殖します」
「過去に戻って、事実を取り消してやりたい」
「洗濯いらずだよ? 嬉しいだろ?」
「マジ死ね!」
男は全力で叫んだが、青年は聞いてなかった。
機嫌よく帰っていく青年を見て、男は諦めた。
しばらく、眠らないようにしないと。
?「ドリームポイントってなんだよ! MPじゃねーの!?」
斧「うちはSP制です」
?「……MPって何の略なんだろう」
斧「魔法ポイント?」
?「すげー日本語的な……」




