M-291 バトンタッチ
バトンタッチ
キミに決める魔法
「ぎゃー」
「しまった……!」
「まずい!」
いつもの戦闘風景。のはずが。
立っているスカイアドベンチャーは二人しかいなかった。
ほかの三人は、倒れグラで横たわっている。
回復ができなかった一瞬を狙われ、舟長、アサシン、剣士が敗れる。
あとには、奇跡的に躱した魔法使いと斧戦士だけが残されていた。
「ターン制っていいね」
「そうだね」
ATBではなく、ターン制を採用しているスカイアドベンチャーは、敵の攻撃を受ける前に、好きなだけ悩むことができる。
どの回復を使うかとか、誰を率先して生き返らせるかとか、どの敵を狙って攻撃するかとか。
一時間でも二時間でも、一日中だって悩むことができる。
「どうしよう、ごり押しでも勝てそうだけど」
「こっちの体力も少ないし、下手に回復してると全滅するかもな」
「うーん、じゃあ分かった」
「ん?」
「わたしがめっちゃ補助魔法かけるから、斧戦士さんは力いっぱい攻撃して」
「了解」
斧戦士は斧を構え、空中をぶんぶん飛び回る敵に照準を定めた。
空中に居ようが、微妙に左右に揺れていようが、関係ない。
敵に当たるかどうかは、自分の命中率と、敵の回避率で決まるのだから。
「ランダムダンス!」
魔法使いの補助スキルで、攻撃力アップが魔法使いに付与される。
いいなあ、と斧戦士が見ていると、魔法使いはにっこり笑った。
魔法使いはもう一度ランダムダンスを唱え、さまざまな強化をおこなう。
敵の攻撃が魔法使いに当たった。
すんでのところで生きながらえた魔法使いは、最後の呪文を唱える。
「バトンタッチ!」
魔法使いに付与されていた補助スキルが、斧戦士に付与された。
魔「ふがー!」
斧「ああ、魔法使いさんがやられた……!」
斧「絶対許さんぞー!」
斧「ベルセルクアタック!」
斧「よし、討伐終了。宿屋に戻って回復するぜ」
舟「おい、蘇生してくれよ」




