M-027 ヘアセット
ヘアセット
髪型を変える魔法
「ヘアセット!」
ぼかーん。
ある日、魔法使いの部屋から爆発音が聞こえた。ヘアセットという掛け声とともに。仲間たちは直ちに駆けつけた。何故か無傷な部屋のドアを開け、中を覗き込むと……。
そこにはアフロヘアーになった魔法使いがいた。
「そういうオチか」
「待って、それにしては尺が短い」
「メタいぞ二人とも」
好き勝手に言う仲間たち。
魔法使いは泣いていた。
魔法がうまくいかなかったのだ。こんなことは初めてだった。
発動しないことはいくらでもあったのに、発動すればどれもちゃんと言うことを聞いたのに。
「うわーん」
アフロヘアーのまま泣き続ける魔法使い。爽やかな秋の風が通りすぎていった。
「終わらないよ!」
斧戦士とお風呂の効果によって、派手すぎる寝癖程度に落ち着いた魔法使い。
斧戦士は多芸キャラで落ち着きつつある。
「どうした急に」
「わたしはこの魔法を使いこなしてみせる」
「おお、魔法使いが立ち直った」
「そして爆発オチ以外の未来を見付けるのだ!」
魔法使いが拳を天井に突き上げると、斧戦士を引っ張って……引っ張っていけなかった。魔法使いはそりを持ってきた。乗せようとした。腕力が足らなくて斧戦士を動かせない。
最終的にお願いして斧戦士とともに歩いていった。
ステータスと重さの概念がこんなところで出るなんて。魔法使いはまたにしても泣いた。
「できたー!」
爆発音が聞こえること三回。二時間後の魔法使いは雄叫びをあげながら下りてきた。斧戦士はゆっくり黙って下りてきた。
「ヘアースタイルセットオン!」
「ほほう」
「そして崩します」
二つ縛りにしていた髪を下ろす魔法使い。縛っていたゴムは机に置く。さあ、今こそ叫ぶとき!
「ヘアセット!」
がちゃこん。何かのスイッチが入った音がして、魔法使いの髪がぐんぐんうねり始める。あっという間に二つ縛り……さきほどの髪型が再現されていた。
右が微妙にうまくまとめきれてないところまでそっくりだ。
「スタイルをオンしとくのと、道具を用意しておくのを忘れると、爆発してアフロします」
「アフロは動詞だったのか」
「バカなこと言わないの」
「さらさらロングも再現されるのか?」
「櫛を用意するのを忘れずにね!」
でないと爆発してアフロヘアーがセットされます。
それでもいい人は何のスタイルもセットオンせずに、ヘアセットと唱えましょう。宴会一発芸用のヘアスタイルに早変わりです。
魔「チリチリになってしもた」
舟「またばあ」
斧「スラッシュ!」
舟「ぐあー」
魔「マタバグアー? 新しいモンスターの名前か!?」
剣「そういや今回斧戦士、なんかしたの?」
斧「いま舟長に鉄拳食らわしたぐらい」
ア「連れてかれただけだったか」




