M-275 アイスストーム
アイスストーム
ブリザードより弱い感じ
「キラキラ~」
夏にしては涼しいその日、少女はそう言ってなんども杖を掲げた。
朝の陽ざしが、反射してまぶしい。
「アイスストーム!」
氷のつぶてがいくつも生成されては、誰もいない方向へ飛んでいく。
彼女の正面に広がる草地には、いくつもの水たまりができていた。
当然ながら、今の季節は夏。
いくら涼しいとはいえ、氷のかけらはその姿を保っていられない。
「うーん。威力に難あり」
「魔法使い? 何してるんだ?」
「こないだの攻撃魔法を仕上げてるの」
「こないだ?」
「こないだ、アサシンちゃんに環境魔法作ってあげたじゃない」
「ああ、試作品がどうのって言ってたヤツか」
魔法使いと呼ばれた少女は、大きく頷く。
彼女の恋人が手直しした魔法は、いまのところ問題なく動いているようだ。
「それで、何が気に入らないんだ?」
「もっと猛吹雪にしたい」
「猛吹雪? 確か、ブリザードとかいう魔法がなかったか?」
「そう、もうあるんだよ。実は」
「じゃあ、いいじゃねーか。差別化ができて」
「うーん」
魔法使いは納得していないようだ。
相手している男、舟長は、何が気に入らないのか不思議がっている。
「もっと見た目をきれいにしたいの」
「ふーん。アサシンに頼んだらどうだ。あいつなら氷の魔法に詳しいだろうし」
「そうするー」
あっという間に玄関に駆け込む魔法使い。
いままさに外出しようとしていた剣士が、驚いて場所を譲った。
「トルネードだなあ」
「それを言うならストームだ」
「ストームでもいいけど、どっちでもよくね?」
事情を知らぬ剣士は、首を傾げていた。
魔「アイスストーム!」
ア「これで、外からは氷の円柱に見えるかな?」
斧「攻撃範囲が恐ろしいほど狭いですけどね」
剣「威力弱くて、当たりにくい魔法って需要あるのか?」
舟「戦闘以外なら、ワンチャンあるな」




