M-272 コンプリートイクエープ
コンプリートイクエープ
やりこみ要素
「舟長、黒曜石20個と、金の糸5個と、それからそれから」
「表にしてくれ」
「はい、これ!」
魔法使いが、舟長に紙を突き付けた。
紙のなかには、いくつか素材名と数字が書かれている。
かろうじて読めそうなメモを見て、舟長は思った。
オレ、表がいいって言ったよな?
しかし、口には出さない。
「なんだ、割と安い素材ばっかりだな」
「失敗するかもしれないから、たくさんある素材から使おうと思って」
「いい心がけだ。……ん? 失敗?」
「ちょっとね」
「詳細」
「あとで」
躱されてしまった舟長は、怒りをぐっと押し込んだ。
あとでじゃねーだろ、あとでじゃ!
言いたい台詞を我慢して、歩き出した魔法使いの後を追う。
着いたのはリビング。
食事用の大きなテーブルの上に、これまた大きな桶が乗っていた。
「溶かすよ。スライミーウォーター!」
「黒曜石って溶けないだろ。絶対」
「信ずれば溶ける」
「……マジで溶けるとか。笑うしかないぜ」
桶のなかにたっぷりと入った、液体黒曜石のなかに、布が投入される。
真っ黒に染まった布を取り出して、部屋に干し始める魔法使い。
舟長が、床が汚れる、と文句を言ったら、ブルーシートで覆われた。
この魔法使い、今日は冴えてるな。
「乾け、かわけー!」
「乾燥魔法でも作ればいいんじゃね?」
「……なるほど」
「考えてなかったのかよ……」
この魔法使い、今日は冴えてないみたい。
「明日まで待とうか」
「またこのパターンか!」
魔「あとは布の端をかがり縫いして、完成!」
舟「詳細」
魔「これはね、上から下まで1セット揃えると、攻撃力が上がる装備なの」
舟「斧戦士にでも着せるのか?」
魔「うーん、まだ試作品だから、どうしよっかな?」
斧「これ、おれにくれるの?」
魔「うん、試作品だけど良かったら」
斧「着ます」
魔「えっ、でも効果低いよ?」
斧「私服として着ます」




