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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
本編(Mシリーズ+Aシリーズ)
27/527

M-025 イクエープマジック


イクエープマジック

魔法を装備品にする魔法




「おらー! セージマターを装備品にしたいっつったから作ってやったぞー!」


 勢いよく現れたのは魔法使い。SKの最強アタッカーだ。頭は少し残念。


「誰もいない」


 誰もいないのに大声を上げてしまったのが恥ずかしくて、彼女は色々と言い訳を考える。

 だがそのどれもしっくり来なくて、結局いない人間のために頭を働かすのが嫌になってしまい、机をどんと叩いた。

 手が痛い。目が覚めた魔法使い。独りぼっち。涙も出る。それは痛みのせいか否か。


「しゃあない。一人で話してよーっと」


 彼女は適当な椅子に腰かけると、テーブルの上に手を置く。


「イクエープマジック!」


 それは魔法を装備品にする魔法。とまで考えて、魔法が被っていることに気づく。なんだか気持ち悪くて色々と表現を探す。


「どんなスキルも装備品に変える魔法です。どや、魅力的になったやない」


 どこの方言か分からないような言葉で自画自賛する魔法使い。


「次は……取りあえず何か作ってみようかな」


 魔法使いはイクエープマジックと唱えたときに出現したインターフェースをいじって、目の前に持ってくる。

 そしてスキル一覧からデスロックを選択する。そのまま掴んで、インターフェースの所定の位置にドロップした。

 カン、と高い音がして、インターフェースが消える。代わりに固そうなカードが落ちていた。


「デスロックのカード……ホーリーカードとは違うのかな」


 ホーリーカードも、即死無効にしてくれるアクセサリーである。SKの中では剣士しか持ってないレアなアクセだ。それを、一戦闘につき無くなってしまうとはいえ、量産できるのはありがたい。

 時間も短時間でいいし、SP消費も5と少ない。

 正直コスパ良すぎるぐらいだ。


「なにか制約つけた方がいいか。どうしようかな」


 あまりいい案は思い付かない。作りたての魔法をうまく使えた興奮でいっぱいだからだ。


「そうだ、スキルを複製したカードは二つ以上付けられないことにしよう」


 術式を書き換えに、階段を上りかけて、気付く。今日、わたし一人だった。と。じゃあいいか、と踏みとどまり、魔法使いはその場でペンを取りだし記述していく。


 斧戦士が帰ってきた。魔法使いは気付かない。斧戦士も気付かせない。じーっと見つめる。


「あれ? さっきよりSP多い……?」


 舟長が帰ってきた。異様な雰囲気に声をかけようとするが、斧戦士に阻止される。舟長が倒れて音を出さないようにする優しさも忘れない。


「今度は発動すらしないし……」


 アサシンが帰ってきた。彼女はさすがに音を出す真似はしない。ただ、斧戦士に押さえつけられている舟長を見て、珍妙な顔をした。吹き出すのを直前で堪えた顔とも言う。


「取りあえず出来たか……ていうか振り出しに戻っただけだけど」


 剣士も帰ってきた。彼は、玄関から察せられる雰囲気に気づいていたので、最初から気配を殺してうちに入った。アサシンや舟長を見て首を傾げたが、それ以上の発展はなかった。誰もしゃべろうとしなかったからだ。

 至近距離で魔法使いを見つめる斧戦士。斧戦士から遠く離れて正座する舟長。見守るアサシン。右に倣う自分。


「うん?」


 何かに気付いた魔法使いが顔を上げる。衝突しないように斧戦士が避ける。


「ん? あああれれ、いついつのまに、みんな帰ってきたの!?」

「オレはついさっきだぜ」

「ちょっと前だよー」

「斧戦士のあとだが」

「五時ぐらいかな」

「五時ぐらい? 五時ぐらいってわたしなにしてたっけ?」

「術式書いてSPが多いとか文句いってたよ」

「あ、そ、そうなんだ。じゃあわたしはこれで!」


 そそくさと去っていく魔法使い。それを見て、斧戦士は魔法使いを追わず残った術式に目を落とす。


「……相変わらずバランスがよくないね」






魔「バランス悪くてわるかったな! どうせ平衡感覚ないよ!」

舟「そういうバランスではないと思うが。まあ居心地悪かったろうし、おまえに非はない」

斧「楽しかった」

魔「なに何時間もみつめてんの!」

斧「ごめん」

魔「いいけど! 怖いから今後禁止ね、禁止!」

舟「(いいんだ……)」

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