M-253 メテオストール
メテオストール
↑?
「とうとう説明すら放棄したか……」
舟長が残念がっていたその日。
とあるカップルの間で一大イベントが起こっていた。
特に何の記念日でもないけど、贈り物を渡す。
はにかむ彼女が彼に手渡したのは、黒と赤が混じったような禍禍しい色合いのストール。
この時期にマフラーは暑いので、定番は外したのだ、と自信満々に言う彼女。
彼はとっても嬉しそうだ。
「ずーっと大事にするよ」
「一応、装飾品としての効果もあって、装備している間、攻撃力が上がるんだよ」
「冬もつけます」
「冬はマフラー作るよ」
「わーい」
噛み合ってるのか、そうでないのか。
中二病カラーのストールは、彼の手元にある。
「さっそくつけるよ」
「えへへ」
「どう? 似合ってる?」
「ステキ!」
なるほど、腹黒そうなオーラ漂う彼には、そのストールは非常にマッチしていた。
首元に輝く隕石のカケラ。
彼女はいそいそと懐を探す。
ポケットから、もう一つ同じ色合いのマントが現れた。
「こっちはただの装飾品」
「見た目装備?」
「うん。アバター装備だね」
「よいしょ。こうかな?」
普段から身にまとっている鎧の上に、マントを羽織る。
ばさり。
風にたなびく、赤と黒。
あなたはどこのラスボスですか?
「ラスボスっていうか、裏ボス?」
「それか、悪の指導者みたいな」
「演説が上手そう」
「頑張る」
すっかりやる気の彼は、彼女を伴って街へ行く。
見せびらかすように歩いていくと、周りの人はみんなぎょっとして離れてしまう。
「ん? 斧戦士さん、威嚇でもしてるの?」
「今日はしてないです」
「じゃあなんだろ?」
不思議がる彼女の前に、兵士が一人現れた。
二人は捕まった。
舟「メテオストームなら分かるが、メテオストールってなんだよ……」
ア「舟長! 大変だよ、斧戦士と魔法使いちゃんが捕まったって!」
舟「あいつらなら自力で脱出できるだろ?」
ア「それがさ、クロなんとかとかいうヤバい組織とのつながりを疑われてるらしくて……」
舟「ウチはクリーンな冒険者だぞ!?」
魔「あの色合い、ヤバい組織のカラーリングとそっくりなんだって」
斧「せっかく魔法使いさんが作ってくれたものを……斧戦士さん、ぷんぷんだぞ!」
魔「目の前で作成方法を見せたら、解放してくれたからいいじゃん」
斧「そうだ、その組織を滅ぼせば、堂々と着られるんじゃね? いいこと思いついたぜ」
魔「今度は安全な色の素材を溶かさないとね。……おや、斧戦士さんはどこ?」




