M-241 チャージアタック
チャージアタック
威力に比例してスティックが壊れる
「もうスティックは要らねーよ!」
「なんでよ」
「魔王がポテ……あぶねっ」
「ロングソードとかあるね」
「やめろ!」
魔法使いが舟長に怒られている。
きょうはいい天気だ。
「さて、このスティックだけど」
「見覚えがあるな」
「うん。こないだ、舟長と二人で冒険に行った日、敵に囲まれたから渡したのに、舟長が使いかた間違えて全滅したときのスティック、現物ママだよ」
「いやに説明的なセリフだな」
「現物ママだよ」
「分かったから」
魔法使いからスティックを受け取る舟長だ。
戸惑っている。
使いかたはぐるぐる回すだけなのは分かったが、これで今度はなにをさせる気なのか。
「この魔法はね、威力を高めるものなんだ」
「おまえ、なんかはしょってるだろ。ちゃんとイチから話して」
「え? えーとね、この魔法は、この魔法によって放たれる魔法攻撃の威力を高めるものなんだ」
「スティックを回してか?」
「そう! 回せば回すほど威力は高まるよ」
いい笑顔で微笑む魔法使い。
舟長はこの後の展開が分かって、表情を曇らせる。
「で、オレにやれと」
「この魔法、物理依存なんだよね。わたしがやっても悲惨なことになるけどいい?」
「斧戦士はどうした?」
斧戦士とは、舟長がリーダーを務める冒険者パーティー随一の攻撃力を持つ仲間である。
数値化すると750。
ごく普通の一般人が100、舟長が300、ほかの冒険者でも500が精いっぱいといえば、すごさが伝わるだろうか。
物理依存なら、彼に任せれば一番いいだろうに。
舟長はいぶかしんだ。
「なんか、斧戦士さん、忙しそうにしてて」
「そんなことないよ」
「うわっ、急に割って出るな!」
「舟長、うるさい」
「あまりにも理不尽である」
舟長はいじけて膝を抱えた。
後ろのほうで、チャージアタックの詠唱が聞こえた。
魔「斧戦士さん、回す速度早すぎ。術の構成が間に合わないよ」
斧「全力で回したらスティックが壊れたでござる」
剣「あるある」
ア「これって、壊れるか反応しなくなるかどっちかだよね」
舟「そういうゲームやったことある人しか共感できないネタはやめましょう」




