M-022 プルハンド
プルハンド
むしる手
「ふーははは、舟長、君の出番は今日で終了だ!」
「なにぃ、だがオレにはシステムという味方がある! オレをリーダーの座から引きずり下ろせるもんならしてみろよ!」
「あっそっちはまだ継続中です」
「そうなんだ」
「そうじゃなくて、シーフのリーダーにはお帰りいただこうと思ってな」
「一言でよろしく」
「盗み要らなくなる魔法作った!」
「なんだってー!!」
時はお昼時。舟長の叫び声に、各自部屋の中で過ごしていた仲間たちが集まってくる。舟長を小突いて帰ろうとする仲間を魔法使いは呼び止めた。
「みんな、ドロップしやすくする魔法作ったよ!」
「な、なんだってー!!」
「ナンダッテ……」
「乗り遅れた……」
斧戦士が空気を読み、アサシンが小声で反応する。剣士は足が遅いせいか、乗り遅れていた。
この呼び掛けにより全員の足が止まり、さらに魔法使いの方に全員の視線が集まる。8つの目に見つめられた魔法使いがたじろぎ、斧戦士は目をそらす。
「あー、とね、あのね。確定で一個落ちるようになる魔法です」
「確一!?」
「モンスター一体につき必ずひとつの素材を落とします」
「マジで!?」
「そ、それだけです」
転がり落ちるように魔法使いがステージから退場する。その隙に舟長は自身に回復魔法を施し、声を上げる。
「おい、待てよ。それだけじゃオレを更迭するにはたりねーじゃねーか?」
「ど、どうしてさ」
「なんでどもって……まあいいか。最大四個素材がドロップするかもしれない可能性を捨てて、確一で一個しかドロップしない世界に移動するって言うんだろ。オレは賛同しねーな」
「可能性の話をするならドロップは二個まで落ちる。何も落ちないときもプラスになると思えば……魔法使いさん? どうした?」
舟長と斧戦士がヒートアップするなか、魔法使いが控えめなアピールをした。気付くのは当然斧戦士だけ。彼は振り向いて、魔法使いの意思を確めると、自身と魔法使いの位置を交代した。これで舟長の前に魔法使いが来たことになる。
ヒートアップしていた舟長はその間にクールダウンしてなんだか居心地が悪い。
「どうしたんだよ」
「ごめん! 舟長の言うとおりだ。少し言い過ぎたよ」
「お、おう。こっちこそすまん」
初々しく謝る二人。そんな二人を残る三人は生暖かい目で見守るのであった。
魔「実際に使うと羽をむしるような仕草が入るよ」
舟「なにそれこわい」
魔「あ、舟長。ごめんのぉ」
舟「じいさんみたいに言うなよ」
魔「せめて婆さんと言え」




