M-227 フルパワー
フルパワー
友だち百人以下ならイケる
「これは……また強固な結界で」
「誰? こんなことしたの」
「知らんけど、ただの魔術師にできることじゃないよな……」
どっかの村の障壁を力づくで破壊したスカイアドベンチャー。
何故か、その噂は瞬く間に世界中に広がり、現在彼らはこんな依頼を受けていた。
スイサレストの盗賊を捕獲せよ。
この盗賊は、近くの街の子どもを人質に、結界のある洞窟に立てこもっていたのだが。
子どもがキーを持って脱走に成功したため、洞窟に囚われているらしい。
ついでに、子どもは自力で両親のもとにたどり着き、キーをなくして帰って来たので、今、誰も盗賊を捕まえて罰を受けさせることはできないのだ。
スカイアドベンチャーを除いては。
「これは五人では打ち破れないぞ!」
「ていうか、開けたら干からびた盗賊が出てくるんじゃないだろうな?」
「一月ぐらい前の話らしいね。子どもが出てきたの」
「しかも、その時点で盗賊が結構弱ってたから、脱走できたらしいし」
「いっそ無視して帰る?」
「帰ってもイベント進まないもんな。しかるべき力が備わるまでスルーするか」
著しくやる気のない舟長である。
たぶん、今回の報酬が低すぎたからダメなのだろう。
そんな腑抜けたリーダーに活を入れようとする者がいた。
「待ったあ!」
魔法使いさんだ。
「五人でダメでも、六人ならどうだ?」
「うちのパーティー、五人までしか入れないぜ?」
「問題ない。あと四人は水増しできる」
斧戦士が自分の分体を呼び出しながら言った。
「三人だろ。あとの一人って誰だよ?」
「これ」
ぽいっと、カプセルが放り投げられた。
地面に接触するとカプセルは割れ、中から成人男性のシルエットが浮かび上がった。
いつも酷い目にしか遭ってない、サンドバッグだ。
名前からしてそうだもんね、仕方なかろう。
「よし、九人で総攻撃だ!」
「総攻撃……うっ頭が」
「もうそのトラウマは分かったから」
「サンドバッグ、一番威力の強いスキルを撃て」
「ふーん、いいけど、チャージに20秒くらいかかるぜ?」
「ウェイトインパクトかよ」
きっかり20秒待ったスカイアドベンチャーは結界に臨む。
お互いの技が交錯する!
「ばりーん! ……あれ?」
「壊れる云々のまえに、威力が高すぎて消滅したようだ」
「なんと」
魔「パスタも呼んで十人で総攻撃でもよかったなあ」
斧「アイツ呼んだら一人でいいと思うぞ」
舟「総攻撃……うっ頭が」
ア「そのトラウマ、根深いねえ」
剣「ちなみに盗賊はとっくの昔に死んでた」




