M-210 ザ・フォーゲット
ザ・フォーゲット
忘却魔法
「ザ・フォーゲット!」
スカイアドベンチャーのおうちでは、おはようの代わりに魔法が放たれることなど、日常茶飯事である。
特に、魔法使いと呼ばれる彼女と、舟長と呼ばれる彼にとっては。
今日も、元気よく飛び出してきた魔法に、舟長は避けきれず、もろに魔法がかかる。
どきどきしながら、魔法の経過を見守る魔法使い。
そして。
「なんだっけ、とりあえず席に座れ」
「ほい」
「なんか、そんなに大事でもないことを忘れた気がする」
「ふっふっふ。それがザ・フォーゲットの効果さ!」
「いや、そんな自慢げに言う話じゃないだろ……」
そう言ってから、舟長はふと思い出した。
この目の前でニコニコしている魔法使いに何といいたかったのかを。
「おい、魔法使い」
「ありゃ、効果時間過ぎた?」
「家のなかで魔法放つなっつってんだろ! あとオレに魔法かけるのもやめろ!」
「しまった。も、もっかいだ! ザ・フォーゲット!」
「……何かとても重要なことを、あ」
「い?」
「う?」
「そこの斧戦士ものるんじゃねーよ!」
しかし、舟長の怒りは継続しなかった。
どうせ言ったって無駄なことは分かっていたからだ。
今日も叱りつけたのに、魔法使いは真っ先に魔法に頼った。
まず、ごめんなさいぐらい言えよ。
舟長はそう思うのだが、魔法使いは基本聞いてないので、思うだけにとどめている。
「そうだ、魔法使い」
「どったの、舟長」
「オレを魔法の効かない身体にしてくれないか」
「……ちょっと考えさせて」
魔「ディスペルを常時かけておくとか……?」
舟「長考に入ったな」
斧「ちなみにザ・フォーゲットは効果も時間も微妙な忘却魔法なんだ」
ア「謎の毒舌」
剣「ほんと珍しいな。斧戦士が魔法使いの作ったものを酷評するなんて」




