M-199 シーフブロック
シーフブロック
舟長お断り
「ちょい待て。なんだ、この断りもなくオレの名前使いやがって」
「舟長? どうかしたの?」
「おい、魔法使い。今回の魔法はなんだよ。シーフブロックって、オレの存在意義を失くす気か」
「……やだあ。舟長、勘違いしてるー」
そういって、リビングの机の上に座る魔法使いである。
その手前に椅子があっただろ。そこに座りなさいよ。
「これはね、スリ防止魔法なんだよ」
「スリ?」
「ほら、わたしたちもたまにやられるでしょ? イベントとかで所持品を盗まれる現象」
「ああ。相手が歴戦のシーフじゃなくて、だいたいただの一般人なんだよな。それが?」
「事前にかけておくと、相手の手首が折れるの」
「今日は斧戦士と一緒に考えたのか?」
急に話題が変わったので、魔法使いは困惑した。
それでも素直に首を振って言った。
「違うけど。どうして?」
「えっ、じゃあそのエグイ効果は自分で考え出したのか!?」
「そ、そんなにエグくない……と思わない? ヒールで治るんだし」
「おまえほどのヒーラーなら一発で治るが、一般人は無理だ」
「むむむ。好きでそんな効果にしたんじゃないやい」
やや、やけっぱちに言い放つ魔法使い。
舟長は、警戒した。
そろそろ。そろそろ来るはずだ。たぶん、次に魔法使いは……。
「じゃあ、そこの記述を直すから舟長手伝ってよ」
「オレに手首を折れというのか」
魔「ヒールかけるから、ね?」
舟「これはお蔵入りにしよう、そうしよう。スリの命が危ない」
魔「えー可愛い女の子がスられてたら可哀想じゃない」
舟「おまえは個別で財布持ってないだろ」
魔「ほんとだ。全部、銀行に預けてあったわ」




