M-018 エロエロビーム
エロエロビーム
官能魔法
「くらえっ、エロエロビーム!」
「おれは突っ込まんぞ」
頑なな舟長に放たれた魔法は、一体どんな効果があるのだろうか。舟長に取りあえず変化はない。
魔法使いは首を傾げた。
「あれ? いまエロエロビーム食らったよね? 調子どう?」
「なんともないが……それよりそのネーミングなんとかしろよ、小学生じゃあるまいし」
「エロエロビームって本に書いてあったんだよ! わたしが付けたんじゃない!」
魔法使いは大騒ぎした。が、舟長には効果がなかった。それどころか舟長は、ずいっと寄ってきて、言ったのだ。
「おまえの方はどうなんだよ」
「わたし?」
「もしかしたら使用者に効果が出るタイプかもしれねーだろ」
「えっビームなのに? 官能魔法がわたしに? 誰得なの? いったい何が得すると思って魔法が作られたの? オナニーなの?」
「ホントにどんな効果が出る魔法なんだよ!」
「自己満なの?」
「たぶんそっちのオナニーとも関係ないと思う」
舟長は冷静に突っ込んだ。
結局、初心も忘れてツッコミに回ってしまった舟長だったが、その変な魔法には興味があった。男のサガであろうか。
なんであれ、とにかく書かれていた本を持ってこい、と言われた魔法使いはどたどた階段を駆け上っていった。
「エムエムビームかもしれないし、まだ希望は捨てるんじゃない」
どたどた階段を下りてくる音がした。もちろん、魔法使いだ。辞書ほどの厚みのある本を抱えていた。随分古い本のようだ。書いてある中身が不安になってきた舟長。早速指定のページを開かせる。
「どこだ?」
「これ」
「エロエロビーム。うん確かに書いてあるな」
「繁殖を活発にさせる魔法」
「繁殖……? まさか、魔法をかけられる対象に条件があったりしないよな?」
「あっ、家畜と植物限定だって」
今度こそ舟長はほっとした。緊張が解け、身体中から力が抜けていくのが分かる。
「どったの舟長、床に埋まって」
「あのな。オレが本当におまえを襲ってたらどうする気だったんだよ」
「大丈夫だ、すべての状態異常はディスペルで治る!」
「どこの世界観だ。うちはオールクリアだろ」
「そうだった。まあ、最悪斧戦士さんが助けに来てくれてたと思うよ」
「オレは?」
「八つ裂きになるか、真っ二つに斬られるか。でもいつもうっかり攻撃受けてるから大丈夫だよね?」
「あのさ、本気の攻撃とお遊びの攻撃は違うんだぜ」
思わず口調も変わる舟長。
冒険の中で、それぞれの本性も分かってきた。斧戦士がいつもより本気でキレたところも見たことがある。人を超えた力で人間をなぶる姿も。
あんな攻撃を受けると分かっていれば、たとえ魔法で発情されたものであっても一瞬で萎える。気がするではなく絶対。
「このへん動物いないし、植物にでもかけてみようかな」
「おまえ、オレの話聞いてた?」
「聞いてたよ。むやみに人体に魔法を向けるなって話でしょ?」
危機感皆無な仲間の様子に舟長はあきれ返るよりほかになかった。もう一度説明するのも癪だったし、魔法使いは既に舟長の方を向いていなかった。
「そういうことじゃないんだかな……」
舟長の呟きは誰にも届かなかった。
魔「植物にエロエロビームかけたけど、こう、特になにも変わんなかった」
舟「ふーん。自家受粉するタイプじゃないとダメなんじゃね? あと季節」
魔「次は家畜かあ……やっぱ勝手にやっちゃまずいよね」
舟「当たり前だろ」
魔「いまいち分からんままで終わってしまった。これで感想文書くのは無理だな」
舟「……感想文!? 魔術書で!?」




