M-192 ポインター
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「とんとん、斧戦士さん、手伝って」
「魔法使いさん、今は夜更けだよ、どうしたの」
「夢でおもしろい魔法使ってたから再現したの」
「おれはなにをすればいい?」
「ちょっと髪の毛分けて」
「どのぐらい?」
「ちょっとでいいよ。うん、これだけあれば足りるはず」
「……おやすみ、魔法使いさん」
「おやすみー」
そんな会話をしたとはついぞ知らぬ舟長たちは、朝起きてこない魔法使いを不思議がっていた。
魔法使いがお寝坊さんなのはいつものことだが、斧戦士が行ってもなかなか降りてこないというのは珍しい。
アサシンが腰をあげて、帰ってこない斧戦士ごと魔法使いを連れてこようか考えたときだ。
斧戦士が一人で降りてきたのは。
「あれ、魔法使いちゃんは?」
「寝かつけてしてきた」
「んん? その言い方……さっきまで起きてたってことか」
「昨日、途中で起きてからずっと魔法の研究をしてたみたい」
「おいおい。熱心なのはいいが、睡眠も大事だぞ」
「おれもそう思う。で、これが試作品らしい」
斧戦士が持っていたのは、木彫りのトカゲ。
確かダンジョンの近くの農村に寄ったとき、魔法使いが自分用のおみやげとして買っていたものだ。
魔法使いが、「斧戦士さんにそっくり!」と喜んでいたのを覚えている。
「どう使うんだ?」
「ちょっと舟長、これを持って少し離れてくれないか」
「いいけど……」
「よし、そのくらいでいい。木彫りから手を放してくれ」
「こうか。え? なんか浮いてるし、ちょっと動いてる?」
舟「しばらく放置したら分かったけど、これ斧戦士に向かって動いてるんだな」
斧「おれの髪の毛を触媒にしたって言ってたからね」
ア「わお。ストーカーが蔓延しそう!」
剣「なんてこと言うんだよ。それくらい、魔法使いがなんとかしてるに決まってるだろ?」
斧「……。追加で言っておくことにしよう」




