M-186 マジックエスケープ
マジックエスケープ
脱出魔法
迷宮ダンジョンから正規方法で帰還したスカイアドベンチャーは、このダンジョンの危険性を伝えるべく、行動を開始していた。
舟長は、作ったマップを共有させるために冒険者ギルドへ。
剣士とアサシンは、今からダンジョンへ向かう人に注意喚起を行っている。
そして。
魔法使いと斧戦士は、飛行船のなかで魔法を作っていた。
「要はエスケープキャンディがいくつかあればいいんだけど」
「問題はアメも舐めれない人が大半ということだな」
「うう、どうしよう。助けられなかったら……」
「そのときはリバイブでもなんでも、蘇生法を試せばいい」
「う、うん」
斧戦士のことばに決心を固める魔法使い。
絶対にあの人たちを助けてみせる。
だから、どうか。死なないで。
「さあ、作るよ」
「魔法具にする?」
「そうだね。食べれる魔法具より使う魔法具のほうがいいよね」
「そうだな。キャンディも噛み砕けない連中がほとんどだ」
「だったらジェムだね」
「ああ。数は用意しておく。魔法使いさんはじっくり魔法のことを考えてくれ」
「実は、構成だけは昨日の夜に作ってあるんだ」
魔法使いは、真っ黒になった魔法陣を取り出した。
だが、起動してない。
うまく発動してくれないようだ。
「魔法使いさん、ひとり分でいいんだ。ここの記述はいらない」
「え? ああそうか。ここが被ってたんだね」
「あと、この効果範囲もこのぐらい小さくていい」
「でも、身体の一部しかカバーできないよ?」
「問題ない。首から下げてるギルドカードに反応すれば、ちゃんと転送される」
斧戦士がそう言い切ったので、魔法使いは素直に信じて、魔法陣を改造していく。
記述がだんだん少なくなっていく。
ジェムと呼ばれる魔法具のもとは、込める魔法に限界がある。
こんなに記述が重い魔法を入れようとするならば、目的の人々に届く前に砕け散ってしまうだろう。
それでは意味がない。
「とりあえず、半分になったぞ」
「発動できるか試してみる?」
「マジックエスケープ! あ、いけ――」
魔法使いが消える。
エスケープキャンディで移動するのは、最寄りの街。
マジックエスケープで転移するのは……?
斧戦士は、誰も見ていないのを確認して、黒いもやを出した。
「魔法使いさんの捕捉を。急げ」
ぽこんと飛び出た黒いスライムや、斧を持った男が徒歩ででかけていく。
斧戦士はそれを見送って、自身も動き出す。
一番可能性があるのは、スカイアドベンチャーの全滅時の転送先、ブツニの村。
ほどなくして斧戦士も飛行船から消え失せた。
ア「無事にみんな助けられたね!」
魔「市長さんからトロフィーもらったー」
舟「はあ。とりあえず一件落着か。魔導都市の大迷宮が封鎖された理由が分かったぜ」
斧「あとはエスケープキャンディの会社からケンカを売られないか心配だ」
剣「とりあえず、この感動的な話には首突っ込まないだろ」




