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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
本編(Mシリーズ+Aシリーズ)
19/527

M-017 グラスカッター


グラスカッター

草刈り機




「既に魔法ですらねー!」

「どうしたと言うんだね、舟長」

「おい、魔法使い。さすがにこの説明は……なんだその格好は」


 舟長が驚いたのも無理はない。彼女はいつもの黒いローブではなくて、白い白衣をたなびかせて現れたのだ。黒と白の反転。眼に眩しい白。なにより変なぐるぐるメガネをかけていた。


「ふっふふふ。わたしのことはこれより博士と呼びなさい!」


 そんなことを宣言する彼女を見て、舟長は『ああ、また魔法使いの病気が始まった』と思うのであった。


「ほとんど失敗しかしない落ちこぼれの博士が、庭の草取りをしていたところから話は始まる――」


 成りきっている魔法使い、いや博士にはもうほとんど声は届かない。チラチラとこっちを見ているところからして反応は気になるようだが、それだけだ。まともに話ができる状態ではない。


「お、おう。それで博士はどうしたんだ?」


 舟長も腹をくくった。どうせすぐにボロが出る。少しの辛抱だ。舟長は魔法使い……じゃなくて博士をじっと見て話の続きを促した。


「腰やら膝やらが痛くなった博士は思い付いたのだ。草取りを自動でしてくれる魔法があればいいなと」

「博士なのに魔法なのか?」

「魔法博士なのだ」

「はいはい」

「そこで産み出したのがこの杖、芝刈り機(杖)だ!」

「かっこつえ……」

「この切れ味舟長で試してもいいかい?」

「草で試せよ」


 うっかり突っ込んでしまったが、博士は早速ボロを出していて、助手の名を舟長と呼んだ。それどころか、魔法使いは博士の役にすっかり満足したようで、白衣を脱いでいた。


「ダメ。マッドな失敗ばかりの科学博士は、すぐに人体の話に移るものと決まってるの」

「科学なのか魔法なのかはっきりしろ」

「あ、魔法博士ね、魔法博士」


 すっかり脱ぎ終わったら、今度はいつものローブを羽織り、魔法使いさん爆誕だ。舟長は落ちた白衣を拾ってたたむ。どうしてコイツは女子力を手放してしまったんだろう、と考えながら。


「それで、どうしよう」

「だから草に試せよ」

「そうだね、行ってくる!」


 グラスカッター! と叫ぶ声が遠くから聞こえてくる。

 ようやく舟長は魔法使いから解放されたが、そこで一つ気付く。始めの彼の叫びが魔法使いになんら理解されていないことを。

 舟長は魔法使いのあとを追い、なにかにつまずいた。魔法使いだった。


「なにしてんの?」

「痛い……。範囲は決めたから、自動で草刈りしてもらってるとこ」

「自動って杖はどうした」

「杖? そこに浮いてるじゃない」


 空飛ぶ、そして地味に自力で動いている杖を見て、舟長は思った。これの方が草刈りしてくれるよりずっとすごいんじゃないかと。

 魔法使いの隣に座り込む舟長。


「一緒に待つ?」

「あー、うん。そうすっか。いつ終わんの? これ」

「さっきやり始めたとこ!」

「それは知ってる」


 自動草刈り機は非常にゆっくりと稼働していた。






魔「あのあとさんざん待ったけど終わらなかったので、夕食ごろには家に入りました」

舟「寒かった、割りとマジで」

魔「朝起きたら終わってて、杖は手元にあったよ」

舟「地味に便利だな」

魔「これはお蔵入りだね!」

舟「そうか……えっそうか!? 使えるだろ、これ!」

魔「えっ? じゃあこれ舟長にあげるね」

舟「……要らない子なんかじゃないからな」




魔「葉っぱをカッター状にする攻撃とは何の関係もないからね! 一応言っとくけど!」

舟「なにが……ああ、ポケットサイズの化け物か」

魔「こっちは葉っぱをカッターしちゃう方だから!」


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