A3-181 ドリームイマジン(邪)
ドリームイマジン(邪)
可哀想
「ふんふふんふーん」
鼻歌を歌い、積まれた本を読む男。
その居所は牢屋であった。
「これがこうなって……うわ、変な記述、誰だよ書いたの」
「魔法使いさんについて何か言いたいことがあるのか?」
呟いたら、鉄格子の向こう側にもう一人男が出現した。
ついさっきまでその魔法使いさんと愉快な仲間たちと戯れていたようで。
男が初めて会ったときには身に付けていなかった、斧を装備している。
「あーなんでもないです、撤回します」
「ふん。書いてみれば分かるだろう。あの世界の魔法はそんなに簡単には作れないと」
「おお、書かせてくれんの? で、そのための紙とかは……」
「自力で調達しろ。第一、学園長からスキルを奪ったならできるはずだろう?」
「あ、魔紙ってそういう使いかたをするもんなんだね」
男はそう言うと、自由な右手をかざして呟いた。
「魔紙印刷」
イメージしてほしいのはプリンターである。
仮にもローファンタジーを名乗る作品でプリンターとか言うなよと思うかもしれないが、魔法使いを始めとする五人が活躍する世界は、男の収容されている世界と同一ではない。
そして、いま斧戦士がいる世界にはプリンターが存在する。
よって、問題なし。オーケー?
で、男の右手からプリンターの如く、魔紙がずずっずずずっと出てくる。
「なにこれ、印刷ミス?」
「劣化しているからだろ、このハゲ」
「ハゲてねーよ、ハゲ」
低レベルな言い争いはきっと気まぐれだ。
普段なら斧戦士はこんな男とまともに会話する気はさらさらない。
疑問に思って、男は初めて顔をあげて、斧を持つ男を見上げた。
斧戦士は、笑っていた。
「ハゲ、とても興味深い魔法を見せてやろう」
「この魔法陣、書き方の癖からして大事な彼女の作じゃねーか」
「そうだ、魔法使いさんが作ったんだ」
鉄格子越しに見ているので、詳細は分からないが夢に関する魔法らしい。
夢……? なんだか嫌な記憶がよみがえる。
「これから、これをおまえにかけてやろう」
喜べ。
そう言った斧戦士の顔は、まさに満面の笑みであった。
斧「よく分からない人は、フェイスマスクとアウトドリームを見るんだ!」
?「ダイマ。ところで、オレの名前いつまでハテナマークなの?」
斧「そんなことは知らん。案外怯えないんだな」
?「実体化してくれるなんてむしろありがたいぜ。殺せるじゃん」
斧「相手は夢のなかの住民だぞ。延々と蘇るに決まってるだろ」
?「え? じゃ、じゃあまさか――」
斧「ふはは。くらえ、ドリームイマジン!」




