M-176 クロスレイ
クロスレイ
探査魔法
ええっと、どこに置いたかなあ。
なんて呟いているのは、スカイアドベンチャー1のアタッカー、魔法使いだ。
彼女は現在、家のカギを探している。
昨日、本を読んでいるときにしおり代わりに挟んだのはいいのだが、どれがその本なのか分からなくなってしまったのだ。
机に出ている本は三つ。
これだけ少ないなら手動で探せよ、と思うかもしれないが、ここで素直でないのが魔法使いという女性である。
新作魔法を作るいい機会だと思って、机に座った。
「さあて。作ろう」
「魔法使いさん、ご飯だよ」
「もうそんな時間だったのかー、よーし、これは後にしよう」
机に座ったとたん、斧戦士が顔を出して言う。
そこで魔法使いはぐずったりしなかった。
そこは素直に従うのが、魔法使いのポリシー。
ご飯は大事。
さて、翌日。
今度こそと意気込んで、魔法使いは机に座った。
とりあえず、誰も来ていないことを確認して、魔導書を開く。
魔導書というと固い印象があると思うが、要は学園の教科書だ。
魔法の簡単な作り方と、いくつかサンプルになる魔法が紹介されている。
「探検魔法はどこだったかな」
目次から索引してページを見つけようとする魔法使い。
しかし、残念。
探検魔法という項目やカテゴリーはないようだった。
「ええ、じゃあ、冒険魔法だっけ?」
これでもないらしい。
「次は……、んーと、辞書!」
辞書で類義語を調べるつもりらしい。
もう、めくって探した方が早くない?
「調査魔法でもないし、捜索魔法でもない……」
片っ端から調べる魔法使い。
だから、もうページをめくったほうが早いよ。
「探査魔法とかないよね」
諦めつつ、見つけたその単語は。
索引で煌めくように眼が吸い寄せられる。
「あったー!」
「あった? 良かったね」
「ふひょお! お、斧戦士さんいつからそこに……」
「いま。声かけたけど、返事がなかったから来たよ」
「あ、そうなの」
「おやつの時間だから呼びに来た」
「……! おやつー!」
広げていた魔導書を放り出し、魔紙を放置して魔法使いは階下へ。
斧戦士は横を駆け抜けていった魔法使いの後ろ姿を見送る。
もう少し、じっと眺めていたいところだけど。
斧戦士はかんたんに机の上を整理してから、魔法使いの後を追った。
魔「でけた」
舟「おめでとう」
魔「カギも見つかったし、この魔法は要らないかな」
舟「魔法使い、この本にクロスレイをかけてくれないか」
魔「いいよー」
ア「ちょ、それボクのへそくり入りの本!」




