M-172 パワーカウント
パワーカウント
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「あなたの能力、数えまーす」
「なんだ、その売れない占い師みたいな発言は」
「む、舟長。これ、商売にしたらウケないかな?」
「まず、能力を数えるってなんだよ」
占い師みたいな黒いローブをはためかせて言うのは、魔法使い。
そんな彼女に、的確なツッコミを差し込んでいる人物こそ、舟長。
スカイアドベンチャーのリーダーだ。
「スキルの数を数えること」
「それ、何の意味があるんだ?」
「これから、我々と同じようにジョブを変えて戦う冒険者が増えれば、スキルも多様化する」
「それは分かる」
「いずれ、スキル数で優劣を競う時代が来るはず」
「ずいぶん飛躍したな」
「よって、スキル数え屋は必要」
「ちょい待て」
舟長は黙っていられなくなった。
ツッコミどころが多すぎる、この仲間の発言に、自らの役目を思い出したのだ。
そう、舟長はツッコミ役。ボケてはならない!
「たとえスキルの取得がやたら多い時代になったとしてもな? どんなスキルを使えるかが問題であって、スキルの数はそう自慢にはならんだろ」
「そうかなあ。基礎スキル全部取りました、総数53ですって言われたら、インパクトない?」
「53とはまた微妙な」
「わたし、いくらスキルや魔法が発明できるからって、530000もスキルないと思うんだ」
「そういう意味か」
納得した舟長は、その点への追及をやめにする。
引用になに言ってもしらけるだけだ、と彼は知っているのだ。
「じゃ、なんだ。今日作ったのは魔法具のほうか?」
「ううん。魔法」
「おい、それじゃ商売にならんぞ。どうせ、誰でも唱えられるようになってるんだろ?」
「うん。けど、効果対象に自分を選ぶことはできないのだ」
自信満々の魔法使い。
どうやって説明したら、腑に落ちてくれるだろうか。
止める方法を考えながら、舟長はとりあえずこれだけ言った。
「……まだ、時代が到来してないから店を出すのはしばらく後な」
魔「ジョブチェンジすると強くなれるのに、どうして誰もやらないんだろう?」
舟「ジョブ変えるごとに装備品が変わるからな。それを整える金がないんだろう」
魔「拾えばいいじゃない。ダンジョンの宝箱をあさればいいじゃない」
舟「あさる言うな。だいたい中堅冒険者ならともかく、始めたばっかのやつにできるか!」
魔「じゃあ、中堅冒険者はなんでやらないの?」
舟「めんどくさいんだろ、築き上げてきた自分のやり方を変えるのは」




