M-168 リバース
リバース
絶対近寄らせないマン
「なんかチートっぽい魔法できた」
「どんなだ。見せてみろよ」
じゃあ、と魔法使いが差し出したのは杖。
何をしろと言われているのか、付き合いの長い舟長には分かった。
相変わらず言葉の足りないヤツだ、と思いつつ、杖を返却して、外に向かう。
今日はいい天気……ではない。
太陽は雲に隠れて見えないし、雨は降ってないものの強い風が吹いている。
舟長は魔法使いからかなり離れて、詠唱を始めた。
「……何でくるかな? 何でくるかな?」
この風のなか、かなり距離を置いた。
魔法使いに、オレがなにを詠唱しているのかは分かるまい。
まったく警戒していない魔法使いを、舟長は苦々しく見る。
それとも、その反則っぽい魔法はなんでも無効化する魔法だというのか?
「フレイムフィールド」
「リバース」
舟長が詠唱している間、魔法使いも詠唱をしていたらしい。
魔法の発動はほぼ同時だった。
舟長の魔法の効果は、足止め。
全体炎魔法が対象の相手の周りに展開され、身動きを鈍らせるもの。
始め、炎は魔法使いに向かって飛んでいった。
しかし、1/3もいかないうちに、舟長のほうに戻ってくるではないか。
「ちょ」
舟長はあわてて距離を取る。
「うはは、どうだね、自分が撃とうとしたものに狙われる気分は」
「ラ〇ュタの人みたいなセリフだな」
「なぬ、余裕……というか、あんなおっさんと一緒にするではないわ」
「おっさんってほどおっさんじゃないだろ」
「いやおっさんだ」
事前に避けたので、炎に巻き込まれることはなかった舟長。
少し驚いているようだ。
そんなリーダーに魔法使いはご満悦。
「ところでさ、この炎、消した方がいいよな」
燃え盛る炎。
魔法使いはじっと炎を見つめている。
炎は地面の枯草を燃料に、どんどん大きくなっていく。
「ええと……れ、レインドロップ……」
「もう間に合わねえよ! ギガウェイブでも使えって!」
魔「舟長が腕を引っ張ってくれなければ、火傷するところだった」
舟「火傷なら状態異常だし、あとで治せるからいいだろ」
魔「よくない! 痛いのイヤ!」
舟「じゃあ、眺めてないで消火活動すればよかっただろ!?」
魔「うわーん、舟長のバカー!」
斧「……泣かしましたね?」
舟「いや、えっ、ちょ」




